『青い山脈』
戦後間もなくの日本人が織り成した青春群像劇
1947年6月から10月にかけて新聞上で連載された小説『青い山脈』。当時盛大に人気を博して映画化されること数回。同タイトルの歌も遅れること2年、1949年に発表され、大人気のスタンダード・ナンバーとなった。むしろ、若い世代には「青い山脈」といえば歌のタイトルと思っている人が多いんじゃないかと思う。
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『青い山脈』
新潮文庫より
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この物語、戦後の民主主義思想のプロパガンダに使われたりと、実に賛否が分かれやすい作品なのだが、難しいハナシはさておいて。内容自体はすこぶる健全で、春風のように快いものである。テンポも描写も丁寧だ。登場人物の心の揺れなどの描写は2011年の今でも十分通用しよう。
時代は新たな価値観を求めていた戦後間もない頃。それまでは軍国・帝国主義であったこともあって、男女交際は公にできるものではなく、非難の対象であった。男女交際など今でこそルールレスな感があるが、戦後急激に風潮が民主主義に切り替えられた当時は、皆、手探りだった。そんな時代に、とある学校を舞台として大人も子供も真剣に新しい時代の心の在り方を模索してゆく青春ストーリー。
作者の石坂洋次郎は、青森で教員をしていたこともあり、その内容には本当に当時の人々のリアルな様子が感じられる。ときめきから遠ざかって久しい人にこそ、一読して欲しい。時代を越えた普遍的なものが、気持ちよく描かれているから。
『センセイの鞄』
大人が嗜む、スロウなラヴ・ストーリー
『注文の多い料理店』
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