『ドラゴン桜』
それまでの常識を打ち破った、受験生のバイブル漫画
1877年(明治10年)、日本で初めての近代的大学として設立され、今日では、大学の国際的指標とも言える『タイムズ・ハイアー・エデュケーション』による「世界大学ランキング2012-2013」内にて、アジア第1位、世界第27位にランクしている、東京大学(通称・東大)。
この指標のみを鵜呑みにするならば、つまりは、東大は「日本一の大学」と形容され得る。そして、その入学試験は、日本の他の大学よりも難しいものだととらえがちだ。翻して言えば、そのイメージが浸透しているからこそ、「東大卒」をある種のブランドとして展開する派閥・芸能人・医師・弁護士などの社会人が散見されるわけだが。
さて、そんなイメージを一蹴し、今までの国内マジョリティの常識を打破し、東大をより身近な存在へと位置づけた漫画が、三田紀房の『ドラゴン桜』だ。当該作は連載を2007年に終了。しかし、今でも高校の図書室や学習塾などに配されているケースも多く、変わらず受験生のバイブルとして愛読されている。
東大は、本当に日本一入学するのが難しい大学なのだろうか? 考えてみれば当たり前の事であるが、回答は、どの科類(文科1~3類、理科1~3類の計6科類の内から1つ)をどの教科で受験するかによる。つまり、受験生は本人が得意な教科で勝負に出るもよし、受験者数が少ない(ライバルが少数)と見込まれる教科で点数を稼ぎに出るもよし。選択の幅がある程度あったりすることに、本書を読むと気付かされる。
これを読むと、いかに多くの人が「東大」に対して思考停止して来たかが分かる。作中でも「知らないということは、損をするということ」なる訓示が何度か出てくる。だが、それは作者の三田も同様であったという。
『ドラゴン桜』の主人公は、学生ではなく、桜木という弁護士だ。これは元々、漫画のストーリーの軸を「財政破綻した高校の再建」に設定していたからだそうだ。しかし、打ち合わせの席で、三田の担当編集者が「東大なんて入るのは簡単でしょ」という一言を放つ。明治大学卒の三田は少なからずその言葉に驚いたという。そして、その驚きや東大入試の実態を漫画にするほうが面白いと考え、漫画の路線変更を決断。かくして、前代未聞の受験漫画『ドラゴン桜』は生まれるにいたった。
また、主人公が社会人ゆえに、受験生のみならず受験生を持つ親にとっても、または教師にとっても、一読の価値ある内容にもなっている。
物語は春から春までの1年間。1年間の付け焼き刃ともいえる勉強で、ろくすっぽ勉強してこなかった学生たちは東大に行けるのかどうか、という話になる。だが本作を通じて、きっと彼らは、勉強とは何なのか、東大はなぜ「日本一の大学」と言えるのかをあなたに教えてくれるだろう。
作品情報
・作者:三田紀房
・出版:講談社
・連載期間:2003年10月~2007年3月

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