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じゃじゃ馬グルーミン★UP!
競走馬と青年の成長をつづる5年間

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現実社会では、我々を常に競争がつきまとう。それは生命の神秘でもあるし、また、必然でもある。しかし、人間はまだ良い。敗者にもドラマが存在しえるし、再度のチャンスを見つけることもできるからだ。競走馬の世界の敗者は、もっときつい。落ちこぼれは肉になるだけだし、生きていても生殖本能を満たせやしない(子供を望まれない)。


じゃじゃ馬グルーミン★UP
少年サンデーコミックス第1巻
競走馬の繁殖・育成をになう、北海道のとある牧場を舞台にした漫画作品『じゃじゃ馬グルーミン★UP!』は、『機動警察パトレイバー』で一躍世に出た漫画家、ゆうきまさみによる、競走馬の成長と青少年の成長を見事なバランスで重ねて描いた、5年間のドラマなのである。

タイトルの元になったのは、シェイクスピアの有名な喜劇「じゃじゃ馬ならし」だろう。主人公の一人、渡会(わたらい)ひびきはなるほど、カタリーナ(同喜劇内でじゃじゃ馬とされる女性)とはまた違った様相ではあるが、れっきとしたじゃじゃ馬足り得ようか。彼女は渡会牧場の次女で、乗馬がうまいものの、他のことには唐変木でがさつ。美女なのに、恋愛のれの字も頭にないのだ。

物語は渡会牧場の生産馬の雄・ストライクイーグルがクラシック(若駒たちの三大レースとされる皐月賞・ダービー・菊花賞のこと)候補になるスプリングステークスから始まる。それは東京から高校の春休みに北海道観光に来た主人公・久世駿平(16)が同牧場を訪れ、人生で初めて見た競馬レースであった。かくて久世は同牧場と縁づき、競走馬の生産・育成に携わるようになる。

掲載されていたのは、少年漫画の王道雑誌のひとつ、「少年サンデー」。その中で、『じゃじゃ馬グルーミン★UP!』は、高校生を主人公としながら、安易な学園ドラマにおちいらず、主人公に、そして読者に、「大人の世界」を魅力的に見せてくれた。

高校2年生。えてして、勉強や学校だけが世界のすべてと思いがちな年頃だろう。そこに違う世界、それは競争の現実を含めて、を的確に見せることにより生じるカタルシス。そんなものが『じゃじゃ馬グルーミン★UP!』には、ほどよくあると思う。世界は、厳しいけれどひとつではない。

ストライクイーグルを筆頭とする魅力的なサラブレッドたちと、久世駿平や渡会ひびきを筆頭とするいとおしいキャラクターたち。彼らと過ごす5年間が、つまり『じゃじゃ馬グルーミン★UP!』であり、あなたに「新しい世界」のひとつを提示する漫画に相違ないのだ。


作品情報

・作者:ゆうきまさみ
・出版:小学館
・連載期間:1994年10月~2000年9月





 

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