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『おきらくミセスの婦人くらぶ~』
けらえいこ×ハヤセクニコ

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世間から名作だと評価されているわけでもない、著者の代表作というわけでもない、自分の実人生の大事な定点や指標として折に触れて読み返すでもない、在りし日の自分が個人的に執心して何度となく読み込んだわけでもない、いつどこで買ったのかすらもう思い出せない、なのにどういうわけだか自分ちの本棚に長年居座って離れない。たぶん本好きの方なら、誰でもそんな書物が1冊は自室の(あるいは書斎の)本棚にあるのではないでしょうか。

私にもあります。私の場合は、漫画家のけらえいこさん(1962-)と、雑誌編集者のハヤセクニコさん(1959-?)の対談本、『おきらくミセスの婦人くらぶ~』になります。1993年に刊行された講談社文庫なのですが、2019年現在は絶版になっています。

何について語られたものか。主に「主婦生活」についてのあれこれです。刊行時点でお2人とも、結婚後何年か経った主婦でした。だから当時三十路前後の主婦が、家事や夫婦生活について、ああだよね、こうだよね、いやそれはないわ、などと語っている。それだけと言えばそれだけです。もちろん(?)それらの実態を描いたけらさんの漫画も並列的に収録されているので、漫画ときどき活字、といった構成になっています。

けらえいこさんと言えば、『あたしンち』や『セキララ結婚生活』で有名な女流漫画家ですが、ハヤセクニコさんという編集者に関しては何も━━それこそ現在ご息災なのか否かさえ━━存じ上げません。調べようという気にもならない。本書にはあくまで1人の主婦として登場されているのですから、そういうことにして、余計な追求はしない方が良いんじゃないか。なんとなくそんな気がするのです。

巻末の説明によると、本書は1991~92年にかけて婦人誌に連載していたものを再構成した、ということです。もともとは当時漫画家として少しは有名になっていたけらさんに舞い込んだ連載依頼だったのですが、けらさんが資料提供係のハヤセさんに「何かピーンと来てしまい」、共著に至ったとのこと。ハヤセさんもノリがいい人だったんですね。

本書では2人の主婦が、自分たちの営みについて、ああだこうだと言います。連載当時、私は小学校低学年。当然、リアルタイムでは読んでいません(コロコロとかボンボンとかを読んでいました)。でも本書を読んで思うのは、金融バブルがはじけたとはいえ、いきなり世間が悲惨な空気になったとかではないんだよな、やっぱり、ということでした(本書のお2人のお話はタイトル通りお気楽かつ、ところどころバブリーな要素を含んでいます。DCブランドの服の処分法だとか)。自分の人生を思い返してみても、厳しい空気が世間に漂い出したのって、’90年代後半くらいからでしたからね。

もうひとつ思うのは、女性が女性であり続けるというのは、それだけで大変なことなんだな、ということです。たとえばある新婚主婦の例として、トイレで大をするときの音を夫に聞かれるのが気になって、便秘気味になったという話があります。きついですね。だからTOTOの「音姫」なんか、こういう女性たちにとって、本当に救世主だったんだろうなと思います。

あと、夫婦げんかのときに「事態を悪くするリアクション」という項目があるのですが、この中で「ため息をつく」は、個人的に思い当たる節があります。私もよく「ため息つくなっ!」と女性に怒られましたから。今思うと「申し訳ない」の一言なのですが、若いときにはどうしてもね。

そう考えるとこの本、いつ買ったのかも思い出せないのですが(たぶん20歳前後の頃だと思うのですが)、意外と私の実人生に寄り添ってくれているのかもしれません。わりとマジで。

作品情報

・著者:けらえいこ、ハヤセクニコ
・出版社:講談社







 

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