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『こちら葛飾区亀有公園前派出所』
私たちの「あの日、あの時」はここにある!?

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こんにちは皆さん。本日のお題は、一昨年、じつに40年にわたる連載が終結した『こちら葛飾区亀有公園前派出所』です。まぁ『こち亀』ですよね。日本に住まう成人男性には、たぶん『こち亀』という名称を聞いたことがない人はいないんじゃないか。国内では、それくらいにポピュラーな少年マンガです。

かような巨像に対し、何を申すことがあるのか。何であれ、公に論ずる以上、まずは私と『こち亀』のご縁から話すのが礼儀というものでしょう。

話は90年代前半までさかのぼります。まだ私が小学生の頃です。週刊少年誌などは、行きつけの床屋か耳鼻科で読むもの、という習慣でした。そこで読むのですが、どうにも『少年ジャンプ』には馴染めなかった。何が面白いんだ、これ。そういう感じで斜め読みしていました。読むことは読むけど、自分では買わないな、絶対。そんな雑誌でした。

長じてから知ったことですが、当時は『スラムダンク』や『幽☆遊☆白書』、『ドラゴンボール』などが連載されていた「ジャンプ黄金期」と目されている時代のようなんです。ほんまかいな、と半信半疑ですけどね。一読者としては全然そんな実感なかったですから。ただ、そんな『ジャンプ』の中でも、唯一愛読していたのが『こち亀』でした。当時、私のクラスには漫画を置く本棚というのがあって、そこに何冊か『こち亀』の単行本があったので、確かそれが愛読する契機になった━━と思うのですが、ここは定かには覚えていません。

『こち亀』の何が良かったか。とりあえず格闘モノじゃないってだけで御の字だったんですけど━━当時の『ジャンプ』では、大抵のマンガがバトル展開に走っていましたからね━━、大人の世界が疑似体験できた。これに尽きると思います。当時の『こち亀』(コミックスでいうと70巻から95巻あたり)は、派出所を舞台にしていながらサブカルから政治経済からSF、果てはコントも盛り込まれるなど何でもアリでした。大阪に住まう小学生にはよくわからない世界がそこにあった。でも子供も惹きつける「何か」。それが当時の『こち亀』には確かにあったのです。

例を揚げます。80巻に、主人公の両さんがテレビの視聴率について疑問に思う話があります。マスコミは高視聴率だと謳うけど、観てみるとどうにもつまらない番組。どうなってんだ、これは。物語は進み、視聴率の仕組みや数字のマジックが見えてくる。もちろんそこで終わる両さんではありません。続きは実際にお読みになってご確認ください。ただ、この話を読んで、大人になったらこんなことをやってみたいと思った子供はきっとたくさんいると思います。良いか悪いかは別にして。

今作の特徴は、背景がいずれも「当時」であることでしょうか。決して「ある時代のある国で」という話ではない。まぎれもなく当時の日本、東京がそこに勒されている。ある種の歴史、文化史の資料としてすら機能するでしょうか。そしてそれゆえに、読者はいつでもそこに帰れる。それが魅力だと思います。

よってこう考えられます。今作は、1976年から2016年まで連載されたわけですが、その間のいつ少年期を過ごしたかで、今作のハイライト期は変わると。私なら60~110巻が『こち亀』の全盛期で、他の時期の話にはそんなに愛着がない。平成元年に生まれた人なら、100~150巻あたりの話に愛着が湧くのではないでしょうかね。

2016年、満を持して『こち亀』は終わりました。個人的には特に何も感じなかったです。もう作者の秋本さんもご高齢なのですから、週刊連載で漫画を描くなどの肉体労働は大変におつらいことかと愚考します。お疲れ様でした、そしてありがとうございました、としか言いようはありません。

まぁ連載が終了したと言っても、それ以降もちょくちょく『ジャンプ』誌上に読み切りという形で現れているみたいですけどね。

作品情報

・作者:秋本治
・出版:集英社
・連載期間:1976年6月~2016年9月






 

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