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『小説 こちら葛飾区亀有公園前派出所』
No Way! But こち亀!

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2016年9月、漫画『こちら葛飾区亀有公園前派出所』(以下、こち亀)が完結。40年の連載歴史に幕を下ろしました。私も学生時代には愛読していましたので、感慨深いものがありました。

『こち亀』の40年の歴史の中には、さまざまなことがありました。この『小説 こちら葛飾区亀有公園前派出所』が、連載30周年を記念して刊行されたのも、そのひとつ。大沢在昌、京極夏彦、東野圭吾など、引く手あまたのミステリー作家たちが、『こち亀』の両津勘吉(以下、両さん)や他のキャラクターをベースに短篇小説をつづり、それらを束ねた、いわゆる企画モノです。

ぶっちゃけ、こういった作家のファンの方たちって、漫画を「子供の読む物」と決めつけているんじゃないか。そんな偏見があります。かたや『こち亀』のファンは言わずもがな、「漫画も小説も、表現方法が異なるだけで、ジャンルに関係なく、つまらない物はつまらないし面白い物は面白い」って分かり切っていると思います。『こち亀』作中に上記の主張が出てきますから。


つまり作家のファンの方には、ふだんは馴染みのない漫画の世界を垣間見える機会になっているし、『こち亀』のファンには、『こち亀』を小説家たちがどう料理するかが楽しめる一冊になっている、というわけです。コラボレーションの見本みたいな、相乗効果ありまくりのコラボレーションでしょう。

トップ・バッターは大沢在昌。言わずもがな、新宿署の鮫島警部を主人公にした新宿鮫シリーズの著者として有名な作家です。優秀な刑事でありながら新宿署で孤立する鮫島は、恋人である巨乳歌手・青木晶や、同僚の鑑識・藪英次と浅草へ向かうが、そこで両さんに出会うというお話。ありえねー(笑)。

しかしこういったありえなさがコラボレーションの醍醐味と言えます。いわば「特別編」です。漫画好きの方も、小説好きの方も、納得して楽しめる一冊であることは確かでしょう。個人的には、作家ならではの着眼点に立脚している「目指せ乱歩賞!」が、イチオシです。


作品情報

・著者: 大沢在昌、逢坂剛、今野敏、東野圭吾、石田衣良、京極夏彦、柴田よしき
・原作・挿絵: 秋本治
・発行: 集英社(2006年)







 

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