しんどい。季節の変わり目だからなのか、バイオリズム的なものか、あるいはストレスが溜まっているのか、よくわからないけどだるい。そんなときにはいかに本好きといっても、養老孟司さんの著作など、いわゆる「難しい話」には向き合えない。とてもそんな気分になれない。もっと気軽にさくっと読めて楽しめるものがいい。
というところで、三谷幸喜と清水ミチコの対談シリーズの(今のところ)最新刊である『たてつく二人』を読む。
ああ、落ち着く。それでいてクスクス笑える。いいわぁ。
一応断っておくと、対談とは言っても書籍のための対談ではない。2005年から2014年まで三谷と清水の2人でやっていたラジオ番組を活字化(し、加筆修正)したものである。シリーズは上梓された順に『むかつく二人』『いらつく二人』『かみつく二人』そして『たてつく二人』の全4作。すべて幻冬舎からの出版であり、2019年現在、いずれも文庫化されている。装幀はすべて和田誠の手によるもの。
ラジオは1回につき数分間。そこでのトークを活字にしているので、だいたい1チャプターが10ページ未満で終わる。各チャプターの末尾には、その中身に応じた豆知識が書かれている。たぶん、番組の構成作家である松岡昇によるものであろう。
そういった内容なので、さくさくと読める。また、数ページごとに息つくことになるので、疲れたらポンと投げ出して横に置いておけばいい。まことに楽である。
内容も難しい話はほとんどしていない。こう言っては失礼にあたるかもしれないが、本当にそのへんのおじさんとおばさんの会話である。双方共にテレビでかじった知識を披露するところなんかは、年寄りくさいなぁと(個人的には)思ってしまう。
双方、相手に対して良い意味で遠慮がなく、かと言って全く敬意がないというわけでもない、絶妙な距離感を終始キープしているように思う。この距離感が活字になっても「妙味」が減殺されない所以かもしれない。
たとえば、三谷が(舞台で共演した)中井貴一を評するくだりは以下のような感じである。ちょっと長めかとは思うが、引用させて頂く。
三谷 |
どれだけニンニク食べた後でも、「ハアーッ」てやれば絶対ミントの歯磨き粉の匂いするよ。 |
清水 |
イメージはね。かげますね、匂いも。 |
三谷 |
優しいし、すごく気を遣うし、頭の回転もいいし、お芝居上手で歌上手いでしょ。息も綺麗でしょ。 |
清水 |
あんまり褒めていくと安っぽい感じがしますね。逆に欠点ってないの? |
三谷 |
ない。中井さんって、ちょっと理屈っぽい感じがするじゃないですか。 |
清水 |
仕事に真面目なイメージがあるからね。 |
三谷 |
実際は、全然そんなことないんですよ。感覚派ですから。「かくれんぼしよう」って言ったら、「ああ、いいよ」ってすぐやってくれるタイプ。 |
清水 |
芝居中でも? |
三谷 |
芝居中はさすがにダメでしょ。中断してまではやらない。 |
清水 |
じゃあたいしていい人じゃないじゃん。 |
(三谷幸喜、清水ミチコ『たてつく二人』幻冬舎、2011年、p5)
ああ、いいわぁ。