『日本人の知らない日本語』
エッセイ漫画を長く続けるのは、難しいですよね
日本語教師、海野凪子が原作者を務め、漫画をイラストレーターの蛇蔵が担当した、シリーズの累計発行部数は200万部を超えるベストセラーといえば、『日本人の知らない日本語』です。日本語学校の先生「なぎこ先生」が主人公を務め、様々な外国人生徒との出会い、別れから、日本の文化や日本語の綾を浮かび上がらせています。
2015年11月現在、シリーズは第4巻まで出ています。しかしあくまで個人的な感想ですが、この漫画のピークは第1巻です。
そもそも漫画化に至ったキッカケは、蛇蔵が海野先生と知り合いで、日本語教師をしている彼女の体験談が面白いから、それを漫画にしてみようか、と提案したことだったそうです。つまり、面白い話を凝縮したのが第1巻であるのに対して、その後の巻では、漫画にするために面白い話(ネタ)を探した感が出てしまっているのです。
第2巻では、早くもネタ枯れを感じたのか、「なぎこ先生」の同僚のカトリーヌ先生を主人公にしたコーナーまで出来ています。面白い話というのは、もともとあるものを凝縮、集中して提示する分には威力バツグンなのですが、それを探して描こうとすると、とたんに威力は半減、つまり竜頭蛇尾になってしまいます。よく三部作の映画などで、「最初のやつが一番面白かった」となるパターンです。第4巻では、日本語学校を飛び出し、とうとう「なぎこ先生」は海外に行ってしまいます。
このあたりのクオリティのばらつきには、エッセイ漫画を長く続ける難しさを思い知ります。最初は共感を読んだり、実用的学習にうってつけであったりで、人気を博しても、それはたいていの場合、束の間の享楽にしかならず、継続を試みると、ネタ枯れやマンネリが、通常の物語の漫画よりも露呈してしまうのです。物語の漫画なら、敵役を主役に仕立てて、敵役の過去を描いたりして、ページを稼いだりできますが、エッセイだと主人公目線に限られてしまいますからね。
本質的には、海外の人から見ると日本の言葉や文化はこうなんですよ、という表現に徹しているわけで、日本語の起源や正しい日本語が学べることもあり、私のように何らかの形で文筆業に携わる者には、大変有用です。が、漫画としての面白さは、後半、明らかに失速しています。
作品情報
・原案:海野凪子
・作画:蛇蔵
・出版:メディアファクトリー
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