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『美味しんぼ』
学生やビジネスマンにこそ読んで欲しい、「食」の漫画

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突然だが、仮定の話をさせていただきたい。あなたが女性で、ある男性にハンバーグ・レストランに連れて行ってもらったとしよう。そこで、男性が「ここのハンバーグはね、ひき肉に北海道十勝産の肉しか使わない。それに、仕上げに掛けるブランデーもこだわっていてね・・・」と、得意げにウンチクを傾けだした。あなたは「うっとうしいな」と思いながらも、笑顔を作って、相槌をうっていた。

ここまでは、よくある光景としてよしとしよう。しかし、出て来たハンバーグが、生焼けで、しかもナイフを入れフォークで食べようとしたらボロボロとこぼれ落ちるようなマズいものだったら、どうだろうか。男性が語っていたウンチクは全く機能しない。むしろ、的はずれと言える。当然、あなた(女性)の印象が良くなるはずがない。


食のシーンのみならず、色々な場面で行われる「ウンチクを傾ける=知識を供与する」という行為。その行為の的確な作法を教えてくれるのが、1983年より現在(2013年2月)に至るまで『ビッグコミックスピリッツ』に長期連載されている『美味しんぼ』だ。

作品のテーマは、食と食文化。主人公たちは新聞社に身を置き、本当においしい食べ物とはどのようなものかを記者として取材してゆく。そのジャンルは多岐に渡るため、食産業に直接関係のない人にも必読の書でもある。

さて、冒頭で述べたような、いわゆる「的はずれなウンチク披露」はどうすればしないで済むのか。


『美味しんぼ』の中で、箸の使い方に言及する話がある。このような場合、多くの人が陥りがちなのが、箸の作法やその歴史について云々する、というもの。しかし、これらの方法では分かりやすさに欠け、「結局どういうのが正しいのさ?」と思われるだけだ。

では、作中ではどうしたのか? 主要人物の1人はこう説いた。「箸の使い方が上手な人間は、箸の先をほとんど濡らさない」と。つまり、箸の先がほとんど濡れていない人は、箸の使い方が上手いということだ。

これは、万人が一瞥して判別できる。時間が掛からない上に、とても分かりやすい。「箸の使い方」をどうこう言わず、結果に全てを語らせるからだ。教えられた方は、箸の先を濡らさないようにする過程で、然るべき作法を身につけてゆくだろう。簡単なようだが、話の軸がブレていたり伝える技術が稚拙だったりしては成しえないことだ。

上述したような「ウンチクを正しく傾ける作法」は、何も交遊時のみではなく、学級や会社などのプレゼン・商談の時にも応用できる。要りもしない的はずれな情報をくどくど話す人間のプレゼンなど、誰に対して有効に働こうか。

『美味しんぼ』が30年も愛され続けている理由は、もちろん内容が面白いというのもあるだろう。しかし、それだけではない。子供から大人にいたるまで、その内容から学ぶべき点が多く含まれているというのも、理由のひとつとして挙げられて然るべきではないか。


作品情報

・原作:雁屋哲
・作画:花咲アキラ
・出版:小学館
・連載期間:1983年10月~現在連載中





 

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