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『東京大学物語』
IT‘S 妄想タイム!!

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「寝ていても金が入ってくるから、のんべんだらりと裕福な生活をして」だとか、「この世界が滅んで、私と気になるあの人しか生き残ってなくて、それで」だとか、人の脳内から消えることのない、永久のいとなみ、それが妄想だ。妄想なくして、我々に豊かな人生などない、とは過言ではあるまい。過言かもしれないが、そんなことはどうでもいい。

そんな妄想をあほらしいまでにとことん突き詰めた漫画が、コミックス売上が累計1500万部以上という、江川達也の代表作でもある『東京大学物語』だ。

タイトルには東大とあるが、そんなものは物語とはあまり関係ない。主人公・村上直樹は、頭脳明晰、運動神経ヨシ、ルックスもヨシの高校生。しかしここで「ああ、だからそいつが東大に行くの」と思われる方は、妄想力が足りない。何より彼がずば抜けているのは、その性欲と妄想パワーなのだ。したがって、彼は東大に落ちる。

「おいおい、それじゃあ話として破たんしてね?」と思われる方は、これまた想像力が足りない。高校生である。大学なんて、行ったこともないわけだから、どこか遠い世界の幻影なのである。そんなものより、目の前に歴然として存在する美少女のほうに、どうやったって心は奪われる。村上もそうだった。


ヒロインである水野遥と村上は、ありがちな話から男女交際を重ねていくが、その模様がすごい。とにかく、村上の思考と、その回転速度がぶっちぎっている。たとえば、普通の作品ならセックスの場面など、なるべく無言で、しかも手短に編集するものである。しかし、村上の卓越した頭脳と妄想力は、言葉を限りなく並べ立てる。一話まるまるセックスしているだけというエピソードもあるくらいだ。それで話として成立してしまうのが、村上のずば抜けているゆえんである。

居並ぶ他の登場人物たちも、家庭教師をしていた小学生の父親とデキてしまい、あげくSMを叩き込まれた女性など、なかなか変態的なメンツではある。だが、村上の変態偏差値は、やはり群を抜いているといえよう。この漫画の落ちは、そのことを一番効果的に表している。

妄想は変態の入り口であり、我々の生活を豊かなものにする。そのことを一番如実に物語る漫画、それが『東京大学物語』なのだ。


作品情報

・作者:江川達也とそのアシスタンツ
・出版:小学館
・連載期間:1992年7月~2001年2月







 

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