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伏見稲荷大社
全国の「おいなりさん」の総本社

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京都や大阪北部で「おいなりさん」と言えば、伏見稲荷ふしみいなり大社のことである。京都市南部にある、全国の稲荷神社の総本山。もちろん、私の言う「『おいなりさん』と言えば伏見稲荷大社」はローカルな話である。それは承知している。みなさんには、みなさんの家の近くに、それぞれの「おいなりさん」があると思う。それを否定するつもりは毛頭ない。

と、こうして面倒な断りを入れているくらい、全国に「おいなりさん」こと稲荷神社は遍在している。なにしろ、日本に神社はおよそ10万近くあり、そのうち名前に「稲荷」とつく神社はおよそ3万という。2020年時点で営業中の郵便局の総数は、全国で2万4千弱。つまり、郵便局よりも稲荷神社のほうが多いのである。正に「遍在」と言ってしかるべきであろう。

ただ、そうは言っても、私は大阪北部で生まれ育った。だから、私にとっての「おいなりさん」は伏見稲荷大社になる。それに伏見稲荷大社が全国の稲荷神社の総本社であることは━━つまり、同社が「稲荷」と名のつく神社の元締めみたいな存在であることは━━、動かしがたい事実である。そういったところで話を進めたい。



伏見稲荷大社・大鳥居

出典:Fushimiinari-taisha, torii-1-2.jpg
from the Japanese Wikipedia
(撮影:2020年4月19日)


で、こういうと「なんか凄い神社っぽい」と思われるかもしれない。いや、実際、集客力は凄いのだと思う。たとえば、新年には初詣で神社に行くという人も多くいると思うが、伏見稲荷大社は近畿地方で最多の参拝者を数える神社の一つである。つまり、新年に関西でも有数の参拝客動員数を誇る神社。これを聞いて、へぇ、そうやったんや、と思った。私(と私の家族)は人混みが大の苦手なので、初詣では行ったことがないのである。

稲荷神社と言えば、キツネの石像が散見される神社のことである。伏見稲荷大社とて、例外ではない。それはそれでいいのだが、疑問はある。なんで神社にキツネなん? 伏見稲荷大社のHPいわく、同社で祀る「稲荷大神様」のお使いがキツネであるという。ただし、そのキツネは神様と同様、人間の視力では到底見えない。だから同社では、白い(=透明な)キツネを祀っているのだとか。

宗教関係で迂闊なことは言いにくいが、率直に言って、私は「なんかキリスト教の修辞っぽいな」と思った。キリスト教でも、イエス・キリストは神様ではなく、あくまで「神の子」として信者に崇拝されている。だからキリスト教徒の間では、「イエスは神様なのか、人間なのか」が大きな問題になった。そう聞いている。門外漢の私には、よくわからない話であるが。

キツネも、神様ではなく、あくまで「神の使い」。ではなぜキツネが「稲荷」になるのだろう。



伏見稲荷大社・千本鳥居

出典:KyotoFushimiInariLarge.jpg
from the Japanese Wikipedia
(撮影:2004年7月15日)


神道はもともと五穀豊穣を願う宗教である。つまり生産性の向上を重んじる宗教で、その精神は「産めよやせよ」であるとも言える。明治以降の「大日本帝国」の時代に神道が重視されたのは、おそらくそれゆえであろう。とにかく国民の頭数を増やし、国内産業の生産性を上げて、欧米諸国に追いつかねば。富国強兵━━そのために神道の精神は政府に利用された。

そういう精神からは、当然「働かざる者食うべからず」的な考えも出てくる。余談だが、この神道的エートスに対抗するのが、仏教であるような気もする。なにしろ、仏教では労働は悪として禁じられている。じゃあどうやって食っていくのかというと、働くのは他の善男善女に任せて、仏教徒はそのおこぼれを乞うのである。要するに、「ちょっとお米とか野菜とか分けたってぇな」で、これを「乞食こうじき修行」という。

話を神道に戻すと、神道は五穀豊穣バンザイの、つまりは農家のための宗教である。その農家の天敵は何かと言えば、作物を荒らす害虫や害獣である。一度農家で半年ほど働いてみれば、野生の動物たちが農業を営む身にとっていかに癪に障る存在であるか、ご理解いただけると思う。

害獣にもいろいろあるが、その一つがネズミやリスである。キツネはそれらを襲い、駆除してくれる。それで「稲が成る」から「いなり」━━これが転じてキツネは「稲荷」になったという説がある。現在では、野生のキツネはエキノコックス(寄生虫)系の感染症が危惧されるため、北日本の農家ではキツネも害獣視されていると聞くが。

でもまぁ、伏見稲荷大社は京都の神社だし、そこではキツネは神様のお使いということなので、ご安心いただければと思います。






 

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