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出雲大社
明治以降の「出雲大社」について思うこと

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もし「日本の有名な神社」ランキングなんていうものがあれば(あるのだろうか?)、そのTOP10に十中八九入るだろう。出雲大社はそれくらい隠れのない神社だと思う。出雲大社。聞いたことがないだろうか? いや、もちろん聞いたことがなくても一向に構わない。これから説明していきますから。お付き合い頂ければ重畳。

本州西部にある島根県、その中東部に位置する神社。出雲大社を簡潔に記述すればそうなる。率直に言って、日本人の大半にとっては、それ以上のものではないかもしれない。

同社のヴィジュアル的な目玉は、やはりあの大振りの注連しめ縄ではなかろうか。同社の神楽殿に架けられた注連縄は、全長が13メートル以上、重量は5トン以上にもなるという大柄なものである。同社の創建以来、同じものが架けられているとかでは(もちろん)なく、数年に一度架け換えられている。最近では2018年の7月に交換、奉納が行われた。



出雲大社・神楽殿

出典:Izumo Taisha IMG 20161020 105432.jpg
from the Japanese Wikipedia
(撮影:2016年10月20日)


その注連縄や同社にまつわる「謎」については、久能木紀子が2013年に上梓した『出雲大社の巨大な注連縄はなぜ逆向きなのか?』(実業之日本社)をご参照頂ければと思う。こう言っては不躾かもしれないが、私は神話や宗教性について深入りしたいとは思わない。そういうのをご大層に奉りたい人はそうすればいいのだが、私はそうではないというか。

では、出雲大社の何についての記事を草するつもりなのか? おそらく「出雲大社の歴程」について、である。

出雲大社が具体的にいつ創建されたのかは、実のところよくわかっていない。そのくらい歴史が古いとされている。社名も、出雲大社というのは1871年(明治4年)に付けられたもので、明治より前には「杵築大社きづきたいしや」と呼ばれていたという。また、この明治時代には出雲大社教が設立されている。具体的には1882年(明治15年)。

出雲大社教とは、当時の出雲大社の大宮司が設立した、いわゆる新興宗教である。教団の公式見解としては「出雲大社の信仰を布教する宗教団体」であり、神社本庁とは無関係なのだという。少しややこしい話であるが、出雲大社は神社本庁(つまり国)の管轄下にあるが、出雲大社の信仰を広める出雲大社教は神社本庁の管轄下にはない、独立した宗教法人であるということらしい。

なんでそんなややこしいことになっているのか?

それは「明治時代に何があったのか」に起因する。



出雲大社・本殿

出典:Izumo-taisha11n4592.jpg
from the Japanese Wikipedia
(撮影:2008年7月19日)


明治の時代、国は神道を束ね、管轄下に置こうとした。いわゆる「国家神道」である。そこでは神道の総本社は伊勢神宮(三重県)と国が定めており、これは今でもそうなっている。しかし当時の出雲大社(出雲派)は、これに猛反発した。ふざけんな、なんで伊勢やねん。総本社やったらうちの出雲大社ちゃうんかい━━と。かくして出雲派は、国家神道と決裂する。もうええわ、うちはうちで、国とは無関係にやっていくさかい━━と。その過程で設立された宗教法人が出雲大社教なのである。

出雲大社は「大社」と冠された神社であり、そういう神社は他県にもいくつかある。奈良の春日大社、京都の伏見稲荷大社、大阪の住吉大社など。しかし、出雲大社教は「大社」を名乗っていいのは出雲大社のみであるという見解らしい。彼らの機関誌『幽顕』によると、他社が「大社」を名乗るのは「ご神徳を汚すことになる」のだとか。

そう聞いて、私はこんなことを思い出した。10月のことを俗に「神無月」ともいう。それは、一部の神様を除く全国の神様が、その月には会議が開かれるというので出雲大社に出張してしまうからである。だから島根では10月を、神様がお集まりになる月ということで「神在月」と呼ぶ。こう聞いたことがある人も多いと思う。しかし、実はこれは出雲大社が広めた俗解であるという。小学館の『日本国語大辞典』は、神無月の意味を、神無月の「な」が「の」を指すことから、「神の月」であろうと説いている。

もしかしたら出雲大社の人達って、独占欲が強いんじゃないのか? あくまで個人的な印象に過ぎないが、私はそんなことを思う。近年、同社は「縁結びのパワースポット」としても知られるが、ともすれば縁結びとて、やはり多少の独占欲がなくては成り立たないのかもしれないし。






 

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