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■ 3月31日から4月29日にかけて、映画(実写)をフィーチャーします







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金屋子神社
島根県安来市にて、製鉄の神様を祭る

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一口に「神社」と言っても、何も『古事記』や『日本書紀』などの神話に出てくる英傑を祭っているところばかりではありません。そんなにメジャーどころではないけど、ある地域において、またはある領野において極めて大切な神様を祭っている神社というのも、決して少なくはないのです。

今回取り上げる、島根県安来市の金屋子神社もそのひとつです。


ここで祭られているのは「金屋子神」と呼ばれる神様です。そう言われても、聞いたことないな、と思う人が大半でしょう。金屋子神とは、中国地方で鍛冶屋や製鉄業者に信仰されてきた神様のことです。日本には金屋子神を祭る神社は千以上あるとも言われますが、この金屋子神社は、それらの総本社にあたるそうです。

島根県と言えば、日本で唯一「たたら製鉄」が残るエリアです。皆さんの中には「たたら」と聞くと、宮崎駿が監督した『もののけ姫』を思い浮かべる、という人も少なくないかもしれません。イメージとしてはあれで間違ってないと思います。あの映画の中のセリフにもありましたよね。砂鉄を沸かして、鉄を作っているんです、と。

『もののけ姫』を観たことがないという人は、取り敢えずツタヤなりゲオなりでレンタルして、お手透きの際にでも観てみてください。


話を「たたら製鉄」に戻しましょう。昔はああいった「たたら場」が日本中にあったと言われています。しかし明治以降になると西洋式の製鉄法がメジャーになった。製鉄の分野でも、黒船が来航したわけですね。たたら製鉄は時代に見捨てられ、時代の流れと共に数を減らしていきました。現代においては島根県の「日刀保たたら」を残すのみとなっています。


と、こういう話になると、そんなにご利益ないんじゃないの、と思われるかもしれません。そう思う人がある程度いるのは仕方ないでしょう。現代人には良かれ悪しかれ、ビジネス・マインドや高効率性、収益性やコスト・パフォーマンスを偏重する人が、それなりの数います。どうせお参りするなら、商売繁盛の神様にお参りしたい、なんてね。そして、こういう人が全くいなくなると、それはそれで困ると思います。

私としては、まぁ日本には信教の自由があるわけですから、信仰したい神様を信じればいいんじゃないですか、くらいしか言えません。頭ごなしに「**を信じろ、〇〇は信じるな」というような言明は避けたいものです。なんか昔のジャズ喫茶のマスターみたいでうっとうしいですからね、そういうの。

ただ、たたら製鉄においては、天然資源を用いる以上、山々との、つまり自然との調和を、恒常的かつ長期的に図っていかねばならなかった。その中で「金屋子神」という神様を、人知や常識を超越した畏敬すべきものの存在を、肌で感じる瞬間が彼らにはあったのではないでしょうか。私は製鉄業者ではないですが、どの職業においても、その領野における「神様」がもしかしたらいるんじゃないか、という感じはわかる気がします。

例年、春秋に催される例大祭においては、西日本の製鉄、鍛冶に関わる人々が金屋子神社に集まり、賑わうそうです。その折、たたら場の人たちは神社まで裸足で参拝するのだとか。この「裸足参り」だって、合理性や収益性がないと言えばないでしょう。けれどそんな偏狭な価値観は、たぶんどうでもいいのです。かの地の歴史と脈絡が今日まで連綿と続いており、その末端に自分たちは存在する。身体性を以ってそのことを確認し、了得する儀式なのだろうと私は捉えています。

そういうのって、結構大事なんじゃないかと思いますけどね。



※写真提供:安来市観光協会





 

大神神社
三輪山のふもとにある、日本最古の神社(たぶん)