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王子稲荷神社
石の軽重は神様の思し召し?

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地球の表面の約7割は海であると言います。海は地球に生きるすべての生命にとっての母であり、だからこそ海を汚さないようにしよう、とも。なるほど、そうですね。そうした言説に異を唱えるつもりは毛頭ありません。でも地球は二次元的な平面ではなく、三次元的な立体物です。そうですよね? それなら「地球の表面積も大事だけど体積も大事なんじゃないの」という疑問があってもいいはずです。別に算数の話をしているわけではありませんが。

「地球科学者」を標榜する藤岡換太郎によると、地球全体の体積の約82%を占めるのは、かんらん岩と呼ばれる岩石らしいです。海が生命の母なら、岩石は生命の父。だから私達は、胎内の水のなかで生まれて、死んだ暁には墓石という石に帰るのかも知れません。というところで、今回のお話の主題である、東京の王子駅から歩いて数分ほどの王子稲荷神社です。かの神社には「願掛けの石」という不思議な石があるのです。



王子稲荷神社・拝殿

出典:Oji Inari Shrine 201712.jpg
from the Japanese Wikipedia
(撮影:2017年12月21日)


王子稲荷神社。落語が好きという方にはお馴染みの神社ではないでしょうか。「高倉狐」をベースにした「王子の狐」とかありますもんね。立川談志(七代目)や春風亭柳枝(八代目)の演目としてポピュラーなアレです。なるほど、確かに社内には、狐を象った石像が多く目につきます。

なんでも、王子には大晦日に狐が各地から集まったという古い言い伝えがあるそうで、大晦日から元日にかけては、その狐の行列を再現する年越しイベントが催されています。なんか楽しそうですね。



「大晦日狐の行列」

出典:Oji Kitsune no Gyoretsu4.JPG
from the Japanese Wikipedia
(撮影:2010年1月1日)


この神社、実は存外に歴史は古く、詳しいことはわかっていませんが、どうも平安時代より前に造られた、ということになっているみたいです。鎌倉幕府を開いた武将、源頼朝も奉納したと言われる、千年の歴史を誇る古社。おお、ヒストリック! その境内は青々と茂る木々に囲まれていて、どことなく庶民的な雰囲気が漂います。歩いていると、なんか気持ちが落ち着くという人もいるかも知れません。夏にはヤブ蚊に気を付けて下さいね。

本宮の脇の小道、幾重にも連なる明神鳥居を通り抜けると、小さな祠のなかに「願掛けの石」が鎮座しているのが見えます。

祠の前には、大きく「御石様」と書かれた木札が立て掛けられていて、それによると、「願い事を念じつつ持つ石の軽重により御神慮が伺える」のだとか。つまり「願い事を念じながら、この石を持ち上げてみましょう。予想したより軽く感じたらその願い事は叶いやすく、重く感じたら叶いにくいという神様の思し召しでっせ」ということみたいです。

一種のアトラクションのようですが、神道とはもともと万物に神様が宿られていると考えるもの。この世のありとあらゆるものに神様が宿られている。それが王子稲荷神社ではたまたま石なのかも知れません。実際、詳しい史料などがないため、この「御石様」の由来は、よくわからないそうです。

そういえば、王子稲荷神社とは直接関係はありませんが、古代遺跡には「環状列石」と呼ばれる、大小の石を集めて積み上げた祭場があります。もしかすると、あれも「石に神様が宿られる」ではないでしょうか。古代の人は、現代のような文明や科学的知識は持っていなくても、ちゃんと「岩石は生命の父」であることを、わかっていたのかも知れません。






 

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