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東大寺
東大寺の「東」に何を想うか

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みなさん、こんにちは。本日は東大寺についてです。関西圏外にお住まいの方の中には、東大寺を京都のお寺だと勘違いされている方もまれにいらっしゃいますが、奈良です。ここ重要です。観光地としては京都に大きく水をあけられているのに、この上東大寺まで京都に吸収されたとあっては、奈良の人、怒りますよ。たぶん。

東大寺と言えば、一般には「奈良の大仏」(正式名称は東大寺盧舎那仏像)が拝めるスポットとして、あるいは、南大門など、国宝とされる建築物をいくつか包含する名所として有名なのではないかと思います。やや大雑把なイメージとしては「鹿が放し飼いにされてるトコ」なんてのもあるでしょうね。

まとめると、「鹿がいて、古くからの大仏がある、国宝的なお寺」となるのでしょうか。こう表すと、ネズミがいてお城があってという、千葉のテーマパークにも通ずるところがあるような気がします。え、しませんか。そうですか。



その歴史などはともかくとして━━そもそも建立されて1200年以上経っていますので、正確なところが判らないことも多いのです━━、取り敢えず気になるポイントがあります。東大寺とは、どこから見て東なのか。

日本には東西南北を含む地名が多く(何しろ首都からして東京です)、私たちはつい無意識に「東大寺」という名称をノー・チェックで受容してしまいがちです。しかし、大事なことは無意識に行なわれるアクションの中にこそある、とするならば、ここは看過できないポイントなのではないでしょうか。

結論から先に言います。東大寺は、平城京の宮廷(奈良時代の首都の中心部)である平城宮から見て東にあたります。関西人には常識なのですが、東大寺に相対する「西大寺」という寺院が平城宮(跡地)から西にあります。つまり、東大寺の訪ね方としては、奈良時代に隆盛を誇った平城京を空想しながら巡るというやり方もあるわけです。

もちろん、鹿を見てみたいからと、あるいは宗教的な理由から、またはスケジュールの都合から、東大寺にのみ訪れるのもアリっちゃアリです。しかし東大寺の「東」は、それ自体は大きな構造の一部であることを示しているのです。東大寺は東大寺のみで完結しているのではない。そう語る何者かの視点から、「東大寺」は名付けられた。その何者かの視点に自分を重ねることが、古都を巡る楽しみのひとつ足り得るのではないかと思うわけです。

この、他者の視点に立つというのは、実はとても日本人らしい思考法なのではないかと思います。



だってそもそも「日本」という国名が、他者の視点からのものなんですから。諸説ありますが、ストレートに解釈するなら「日の本」です。ということは、西に在る「自分たちではない他者」に対して、私ら東におりまっせ、とアピールしている。アピールしている相手は中国━━もちろん国民国家などの概念がない時代ですから(『日本書紀』は奈良時代に成立)、当時の感覚としては、海の向こうのアカぬけた大陸くらいのものだったと思いますが━━と見ていいでしょう。つまるところ、国名自体が他者ありきなのです。

QED(以上、証明終わり)。というわけで、現在の町並みに在りし日の平城京を重ねて東大寺を訪れるのもいいんじゃないでしょうか、との提案を以て、本日は終わりにしたいと思います。







 

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