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■ 12月31日から1月30日にかけて、「一九九六年の音楽」をフィーチャーします。







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メーカーズシャツ鎌倉
通称「鎌倉シャツ」ですね

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二十代半ばの頃に、ちょっとシャツに凝った時期がありました。Tシャツではなく、カッターシャツとかワイシャツと呼ばれている方のアレです。当時私は大阪北部のとある会社に勤めるサラリーマンで、ほとんどの日はスーツを着て働いていたんです。暑い時期はシャツにネクタイ、下はスラックスと革靴、という感じでね。だから当時付き合っていた女性とは、デートで百貨店に行ってネクタイを二人でああだこうだ言いながら選ぶなんてこともありました。そのついでだったかな、その頃難波にあった無印食堂に連れてってもらったんですよね、彼女が普段行きつけている店に連れてってと懇請して。店内は人混みが凄くて、彼女から苦笑気味に「三坂さんこういうとこ嫌いでしょ」と言われたことを覚えています。

話を戻すと、当時は独身サラリーマンで、経済面で余裕も少しあった。だからオーダーメイドでシャツを作るなどもしたんです。もっとも、真っ黒い生地に血のように紅いボタンっていう先鋭的なシャツにしちゃって、職場では難色を示されましたけど。若かったですね。その反動かどうかは知りませんが、サラリーマンを辞めてからは、シャツ類ってあまり買わなくなりました。三十代の時に買って愛用したシャツとなると、片手で数えられるくらいしかなかったんじゃないかな。もうちょっとあったのかな? 最近は四十代になったからか、またシャツをぽつぽつ買うようになってますけど。

そういうわけで今回はメーカーズシャツ鎌倉を取り上げたいと思います。通称「鎌倉シャツ」ですね。



カジュアルシャツ オックスフォード(メンズ)
色:白/サイズ:S~XL
税込8,690円(2025年9月時点)

鎌倉シャツは一九九三年に神奈川県の鎌倉で創業した、シャツの製造から販売までを手がける、いわゆる「シャツ屋」です。今でこそ鎌倉のみならず京都や大阪にも出店しているブランドですけど、最初は鎌倉のコンビニの二階に店を構える、ごく小規模な個人商店だったみたいです。

九三年というと、金融バブルの崩壊が言われて久しい時期ですが、サッカーのJリーグが開幕したり、皇太子(今上天皇)御成婚があったりと、全体的には景気はまだまだ下向いてはいなかったと思います。よくこの頃に就職氷河期が始まったと言われますけど、この年の大卒の就職率は七割台後半です。のちの時代からするとそこまで劇的に悪いわけじゃない。



ビジネスシャツ GIZA96(メンズ)
色:ブルー系/柄:ストライプ
税込10,780円(2025年9月時点)

この九〇年代前半というのは、団塊ジュニア世代(一九七一年から数年の間に生まれた人達で、世代人口が多い)が成人して就職する時期でもありました。つまり「大量の若者が一斉にビジネスシャツを買い求めたであろう時期」で、そういう時代に首都へのアクセスが比較的良い鎌倉の地にシャツ・メーカーが登場したのは、大変リーズナブルだと思います。

創業したのは貞末良雄、タミ子ご夫妻。ご主人の方がもともと紳士服メーカーで働いていたみたいですが、かくかくしかじかで、奥さんの出身地である鎌倉で「シャツ屋」をやることになったそうです。

中小企業のリーダーにありがちな話ですけど、このご主人は結構ワンマン気質だったみたいです。社員は社長にただ従うだけの存在でしかなく、実際社名を「メーカーズシャツ」にするというのも彼の独断だったと聞きます。奥さんはそこに自分の生まれ育った地名である「鎌倉」を付けたいと思って、ご主人に「恐る恐る」提案したと広言していました。

彼のような性格をナンセンスと非難する人もいますし、それは分かるんですけど、組織を成長させなきゃいけない時期というのは、強権的なリーダーシップが集団に必要とされたりもするんですよね。たとえばロシアのプーチン大統領だって、今でこそ東欧の非人道的な独裁者って感じですけど、彼は前世紀末の(エリツィン政権時代の)泥沼状態だったロシア経済を立て直した、豪胆無比の人でもあったわけです。這い上がる時に人は、往々にして「善人」ではなく「強い人」を求めるといいますか。

その創業者ご夫妻も寄る年波には勝てず、二〇二〇年に代表の座を降りて、現在は長女の奈名子さんが代表取締役を務めています(二〇二五年時点)。ワンマン社長が退いて組織の体質が好ましい方に変わったのか、同社の離職率は約七パーセントにまで下がったと聞きます。これはアパレル業界全体からしてもなかなか少ない数字でしょう。つまり企画製造から販売まで手がけるメーカーとしての組織体制が、従前より安定しているということです。



クラシックシャツ J-TECH STRETCH(レディース)
色:ブルー系/サイズ:36~40
税込8,690円(2025年9月時点)

そういえばさっき「大変リーズナブル」って言いましたけど、これって、鎌倉シャツの特徴でもあると思います。手が届きやすい価格帯というか、少なくとも海外ブランドのシャツみたいに法外的に値が張るなどはない。具体的な名前を出すのもどうかと思いますが、たとえばシャルベのシャツを試すより、鎌倉シャツの方が(価格面で)遙かに試しやすいはずです。そういうリーズナブルな価格帯をキープしながら組織としても安定しているというのは、なかなか例を見ない素晴らしいことだと思います。

メーカーズシャツ鎌倉 - MAKER'S SHIRT KAMAKURA




 

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