
はいはい、要するに地場産業ね、と思われるのは早合点です。いやまぁ、地場産業ではあるのですが、だからと言って会津桐下駄作りが盛んとかそんなことはないのです。そもそも下駄自体、昭和から平成にかけて履く人が減ってきました。会津桐下駄とて、その傾向とは無関係ではありません。昭和後期をそのピークとして、生産量は減少の一途、だそうです。
会津桐下駄を取り扱う会社自体が減っている中で、黒澤桐材店は珍しく、伐採から下駄の仕上げまで一貫して取り扱っている、日本でもまれな例なのです。そこには「良い物を絶やしてはいけない」という、彼らの執念すら感じます。
単純に下駄の作り方だけではありません。まず「良い桐」を選ぶ目を持たねばなりませんし、それをどう良質な下駄に仕上げていくのかも問題です。木には一本一本個性がありますから、扱うには知識と経験、応用力が不可欠です。仮に私が会津桐下駄を作る会社なんかを立ち上げて参入したところで、きっと出来上がった下駄の品質という面で、黒澤桐材店には歯が立たないでしょう。

ちなみに着物ビギナーの方が下駄に際して先ずぶちあたる疑問は、「草履と下駄と、何が違うの?」だと思います。素材が違うと言えばそれまでですが、もう少し突っ込んで言えば、使うシーンが違います。下駄はゆかたやカジュアルな小紋には合わせられますが、礼装にはNGです。格式で言えば、下駄より草履が上と覚えて頂ければ良いでしょう。また、下駄は裸足で履くイメージがあるかも知れませんが、足袋を履いてもOKです。