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■ 10月31日から11月29日にかけて、「詩集」をフィーチャーします。







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パドローネ
日本人のためのレザー・シューズ

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革靴やブーツなどのレザー・シューズは、もともとはヨーロッパで発明された靴だという。だから日本人が履く必要はないとか、そういう原理主義的なことを言うつもりはない。しかし、本来的に多くの日本人に向いていない靴であることは否めないだろう。そもそも日本人的な体格とか、日本の気候や路面状況に対応して作られたタイプの靴ではないのだから。ゲルマン人向けではあっても、モンゴロイド向けではないだろうと。

であれば、日本人がレザー・シューズを履く折には、日本人向けにアジャストされた、日本人のために作られたレザー・シューズを選ぶ方が望ましい。そういうことになるはずである(こういう話になると、混血の人はどうなるとか、日本で暮らす白人や黒人の立場はうんたらかんたらと反駁し出す人もいるかもしれないが、私が述べているのは総論、つまり「大まかな話」に過ぎないので適当に読み流して頂きたい)。

そういうところで今回は、日本のレザー・シューズのブランド「パドローネ」を取り上げる。



NANO universe PADRONE THE STANDARD LINE / 別注BACK ZIP BOOTS
サイズ:40~42
税込28,600円(2025年10月時点)

と、こうなるとまずは「パドローネとは何か」に触れるのが定石であろうが、ここではパドローネの良い点と良くない点を先に語ろうと思う。

良い点。何と言っても価格帯がリーズナブルである。ガチのレザー・ブーツが三万円台(二〇二五年時点)から手に入る。これは「お買い得」とか「コスパが良い」と言っていいはずである。もちろん三、四万円を稼ぐのは(一般的に言って)大変なことだから、安いとまでは言わない。しかし本格的なレザー・ブーツを買うとなると、十万円以上の選択肢も珍しくないのが現状である。日本で「お手頃なレザー・ブーツ」の代表格として挙げられるレッド・ウイング(アメリカ)でも、最近ではこの価格帯での選択肢は限られてくる。そういう中でこの価格帯は、「安めである」と申し上げて遜色ない。

良い点その二。全体的に軽めである。ブーツなどレザー・シューズには重厚なイメージがどうしても付きまとう。たとえばアメリカの老舗ブーツ・ブランド「チペア」が、もともとは労働者向けの安全靴を製造していた集団であるように、レザー・シューズの第一義は「足を守ること」なのである。それゆえ、レザー・シューズは(スニーカーやサンダルと比べると)どうしても重くなりがちだが、パドローネの靴は総じて軽めに作られている。

ということは何だというと、その裏返しが「良くない点」になる。すなわち、体重が軽め、あるいは標準的な人はともかく、重めの人には高確率で向かないのである。普段3Lとか4Lの服を着るのが当たり前の大柄な人がパドローネの靴を試し履きすると、その軽さに「これ大丈夫か?」と一抹の不安を覚えるのではないか。私は細身なので、あくまで想像でしかないけれども。

あと、個人的には展開されているサイズが限定的で、足のサイズ的にちょっと合わないという人も多いかなと思う。このあたりはインソールを使ったりしていくらか補えるかもしれないが、やはり限度はあるだろうし。

ここまで長所と短所を述べた。ではそれらの特徴は奈辺に由来するのか? というところで、話は「パドローネとは何ぞや」に移る。



NANO universe PADRONE / 別注WESTERN BOOTS(ブラウン)
サイズ:40~42
税込41,800円(2025年10月時点)

パドローネはそこまで歴史のあるブランドではない。同ブランドの設立は二〇〇六年。先述のチペアが一九〇一年創業であることを思うと、キャリア面では新米同然と言って差し支えない気がする。

ただしブランドとしてはそうであっても、レザー・シューズの製造に関しては〇六年以前からキャリアがある。パドローネを創設したのはミウラという有限会社(当時)で、彼らは昭和後期からコム・デ・ギャルソンなどのデザイナーズ・ブランドのレザー・シューズを手がけてきた。つまり、OEMをメインにやってきた製靴会社が自前のブランド(いわゆるファクトリー・ブランド)を設立した━━それがパドローネなのである。

彼らのレザー・シューズがリーズナブルな価格帯であるのは、ファクトリー・ブランドだからという所が大きい。自社工場で靴を作って、それを売る。中間搾取する業者が介在しない。だから値段を抑えられる。反面、大々的に宣伝を仕掛けるなどはできないので、知名度は低く、知る人ぞ知るというフェーズに留まっている。また、この小規模さゆえに、そう多くのサイズを展開できないということもあろう。

パドローネのレザー・シューズを見ると、オーソドックスなデザインが多く、ストリートからアウトドアまでいろいろなシチュエーション、いろいろな服に合わせやすいだろうなと思う。彼らは長年、多くのデザイナーズ・ブランドの商品を手がけてきた。そこで涵養されたセンスが、自社ブランドのアイテムにも脈々と受け継がれ、生きているのだろう。

重たくて硬い靴は、足も身体も(日本人と比べて)大きめな欧米人の足を保護するためのものであり、日本人には必ずしも向いていない。だからパドローネでは、セメント製法、マッケイ製法を主軸にして、いろいろと工夫を施し、軽めの靴を作っているという。日本人が生み出した、日本人のための革製の靴。それがパドローネなのだと思う。

なお今回の文章ではやたらと「日本人」が強調されているが、私は国粋主義や排外主義に淫しているわけではないし、レイシズムを唱えているのでもない。先述のように、日本人でも彼らの靴が合わない例はあり得るだろうし、外国人でも合う人は合うだろう。本稿の文章はあくまで総論で、各論までは私の知るところではない。そのことは改めて断っておく。

PADRONE|パドローネ




 

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