余談ですが、私の場合、そんなに長くなくても、たとえばセミロングくらいの長さでも、女性が髪を梳かしているのを見ると、「抱きしめていいですか?」と言いたくなります。「いいわけねぇだろ!」とのお返事は了承済み。はい、余談でした。
さて、以前の記事で「黄楊(つげ)は高級品」と書きましたが、櫛にも黄楊の櫛があります。大阪の辻忠商店が作るつげ櫛は、コスメ業界、和装業界では、ちょっと有名なシロモノ。厚み、歯の梳かし具合などが絶妙で、男女を問わず、根強いファンが多いのだとか。
女性には彫花櫛(花を彫ってあしらってある櫛)が大変好評だそうです。つげ櫛は一生モノと言いますから、生涯、花のように可憐に生きたいと願う女心ゆえでしょうか。
黄楊は「木の宝石」と称されるほど、密度が高く、しっかりしています。油分もあり、また、静電気が発生して髪をいためるなどもありませんから、頭髪に悩んでおられる方にこそ、選ばれる櫛だと思います。持った感触、やわらかく地肌にあたる感触などは、ちょっとそのへんの櫛のそれではありません。
ところで、日本語に特有のジンクスだと思いますが、櫛はそのまま「苦死」にあてはまるため、贈り物として選んだり、他人と貸し借りをしたりするなどは、なるべく避けるようにするそうです。仏滅に結婚式を挙げても幸せな夫婦生活を営むカップルもいますから、気の持ちようと言えばそれまでかも知れません。しかしプレゼント候補などにはご用心を、と付け加えておきます。