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浅草サンバカーニバル
「芸能の町」で老若男女がサンバを踊る

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こんにちは。本日のお題は、浅草名物の一つと申し上げていいでしょう、浅草サンバカーニバルです。お祭りのタイトルがいいですよね。説明いらず。内容は読んで字のごとく、東京都台東区の浅草の一角でサンバのカーニバルを催すというものです。

このお祭りは一九八一年に初めて催されて以降、毎年八月の最終土曜日に開催されてきました。しかし二〇二〇年に新型コロナウイルスのアウトブレイクを受けて中止となって以降、二二年まで三年間(代替イベントはあったものの)開かれませんでした。今年二三年は、九月半ばにではありますが、四年ぶりに開催予定だということです。よかったですね。

戦前から浅草は演芸場や劇場が立ち並ぶ「芸能の町」でした。しかし一九六〇年前後にテレビが一般家庭に普及するにつれ、浅草芸能は低調化。地域振興策がいろいろと図られ、その一環で一九八一年にサンバカーニバルを催すことになったのです。カーニバルには老若男女大勢のダンサーが出演し、それぞれのテーマに沿ったコスチュームと踊りを披露します。



浅草サンバカーニバルにて
出典: Wikimedia Commons
(撮影:2009年8月29日)

と、このまま丁寧な感じで行くと、ちょっと調子が出ないので、若干きびきびした文体に切り替えますね。

さて、浅草でサンバというのはどうしてなのだろうか? サンバはブラジルでポピュラーな音楽である。その起源はアフリカ人奴隷であったりポルトガルであったりはするけれども、間違いなく日本ではない。一九八一年の浅草に南米を特別視する理由とて見当たらない。それは、上述のように当時の浅草界隈にさまざまな思惑があってのことなのだが、ここでは敢えてそこをスルーして、ごく個人的な捉え方をしてみたいと思う。

どこかの記事で私は八〇年代を「女の時代」と評した。それで言えば八一年は「女の時代」の初めである。だからサンバカーニバルなのではないか。カーニバルには男性も参加できるが、主役はやはり女性ダンサーである。このことに異論はないだろう。女性が主役の祭りだからこそ、特に浅草と関連がない(と思われる)サンバがこの時代の当地に根を下ろしたのではないか。

浅草は「芸能の町」である。まずは当時の日本の芸能界を振り返ってみよう。一九八一年の芸能界におけるビッグ・ニュースは、やはり前年に芸能界を引退した女性歌手、山口百恵の結婚だろう。一九七三年のデビュー以降、「秋桜」や「横須賀ストーリー」などのヒット曲を連発した彼女は、七四年の映画『伊豆の踊子』で共演した俳優、三浦友和と八〇年に結婚し、引退する。同年末に催された彼女の結婚式は、翌八一年になっても何かと話題になった。

八一年の日本は、山口百恵を失った虚脱感を抱えていた。そしてその穴を埋めるためなのか、多くの女性アイドル歌手が「ポスト百恵」の座をかけて、林立していく。この年、松田聖子は「夏の扉」を、薬師丸ひろ子は「セーラー服と機関銃」を、河合奈保子は「スマイル・フォー・ミー」を、石川ひとみは「まちぶせ」を、それぞれにヒットさせる。


海の向こう、イギリスでもやはりある女の結婚が世間を賑わせた。チャールズ皇太子と、スペンサー伯爵の令嬢ダイアナの、いわゆるロイヤル・ウェディングである。プリンセス・ダイアナ誕生。結婚とは男女双方が主役であるはずだが、世間の目は、結婚して「英国王室の顔」になったプリンセスに注がれた。 なればこその「女の時代」であろう。

結婚後は家庭に入り姿を消した山口百恵と違って、ダイアナ妃は社交のために表に出続ける。彼女の身なりは世界中から注目を集め、世間には「ダイアナ・ファッション」という言葉も定着した。彼女は世界で最も高名な女性になったのだが、「女の時代」を象徴する女は、古い伝統が残る王室とは相性が良くなかったのかもしれない。彼女は一九九六年に離婚、翌年に新しい恋人と「交通事故」を起こし、この世を去った。

また、この年には「女の時代」を逆説的に象徴する奇病も発見された。翌八二年に、後天性免疫不全症候群「AIDS」と名付けられた、エイズウイルスによる感染症である。人間の免疫機能に異常をもたらすこの奇病は、そもそもは男同士のセックスで感染すると喧伝された。やがてそれは男女のセックスでも感染すると分かるのだが、そうなると「女同士のセックスではどうなの?」という疑問が浮かびあがる。つまりエイズとは「男=危険」を告げる感染症なのである。だからこそ逆説的に「女の時代」をも象徴する。

「女の時代」の序幕に、女性を実質的な主役とするサンバカーニバルが初開催されるのは、時代に符合してはいるだろう。では「女の時代」を過ぎた現代でそれはどうなるのか。私にはよく分からない。


浅草サンバカーニバル公式サイト





 

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