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■ 9月30日から10月30日にかけて、「郷土料理」をフィーチャーします。







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茜丸 五色どらやき
地産地消とは縁遠い「大阪名物」

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大阪に生まれ育っておいてナンなんですが、私はつい最近まで「茜丸」を知りませんでした。もちろん知らなくても何も問題はなかったですし、知ったところで何になると詰問されれば返答に窮します。でもまぁそんなことを言っても話は進みませんので、まずは「茜丸とは何ぞや」です。

もともとは1940年に大阪で創業した製餡所ですが、いろいろあって現在は菓子「販売」を手掛ける会社として大阪市天王寺区にあります。五色どらやきは、その名の通り5種類の豆(金時豆、虎豆、うぐいす豆、白小豆、小豆)を使ったあんこを擁するどらやきで、1989年の販売開始以降、「大阪名物」として同社の代表的商品となっています。

と、上の文章で「販売」とカッコを付けたのは、実は同社が「製造」しているわけではないからです。

五色どらやきのパッケージの裏を見ると、製造所は「伊勢餅協同組合」とあります。住所は三重県四日市市。つまり、五色どらやきは現時点(2021年)においては大阪で造られたものではないということです。

誤解しないで頂きたいのですが、私はそれを「あかん」と言うつもりはありません。五色どらやきは(取り立てて言うまでもなく)食べ物です。世の中には「旨けりゃ別にどこで造られたもんでもいいよ」という人はいくらでもいますから、そういう人にとってはこんな情報はどうでもいいことでしょう。

そもそもあんこに使われる5種類の豆自体、いずれも大阪で栽培、収穫されたものではありません。うぐいす豆や虎豆はカナダ産ですし、白小豆はオーストラリア産です。三重県名物の赤福だって、北海道産の小豆を使ったりしていますから、物流や貿易が発達した現代においては、こういうことは珍しくもなんともないのです。

ただし、果たして五色どらやきはいつまで「大阪名物」でいられるのかな、という危惧はぬぐえないと思います。


2020年に世界を席巻した「コロナ禍」は、世の中の問題点をいろいろ浮き彫りにしました。その1つがグローバル経済の脆弱性です。未知の感染症がパンデミックを起こすと、各国でロックダウンや営業停止など感染拡大防止措置が講じられ、生産力、販売力が低下します。これにより、たとえば外国に大いに依存していた小麦が日本では手に入りにくくなり、パスタが品薄になるなどがありました。

「外国産」に依存していると、平常時はともかくとして、非常時には食べ物が手に入りにくくなる。そういう問題が「コロナ禍」によって表面化したのは、記憶に新しいところでしょう。何が起きてもとりあえず食べ物には困らないと言われる農家だって、例外ではありません。たとえば酪農家が抱える牛に与えられるエサはおおむね外国産だったりしますし、花卉農家や野菜畑で使う肥料や農薬だって外国製のものが多くあります。

非常時は、別にパンデミックによってのみ起こるものではありません。政変が起きたり通貨危機が起きたりしても、輸入が絶えたり価格が高騰したりする。グローバル経済は変数がやたらに多過ぎて、誰にも見通しが立たないのです。別の言い方をすれば、「不安定きわまりない」でしょうか。

こうしたグローバル経済の脆弱性を受け、地産地消を心掛ける人達が日本各地で増えつつあります。田舎は過疎化と高齢化で土地が余っていますから、そういうリソースを活かして自活に近いライフスタイルを採る人達も増えている。農業や漁業にしても、加工から販売までを手掛ける「6次産業化」が成り立ちつつあります。時代は「自分達に必要なものは、できるだけ他人任せにせずに自分達でなんとかしよう」に向かっていると言えるでしょう。

そういった趨勢にあっては、茜丸みたいな「販売」を手掛けるだけの会社は、遅かれ早かれ退潮を余儀なくされてしまいます。どこかで「生産」へと舵を切る必要が出てくるはずですが、五色どらやきの材料は(今のところ)いずれも大阪府内では手に入らないものばかりです。だから、いつまで「大阪名物」でいられるのかという疑問は、ぬぐいがたくあるのです。





 

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