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アサヒスーパードライ
バブル期の日本人の食事にマッチしたビール

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こんにちは。本日のお題は、アサヒビールのアサヒスーパードライです。個人的には好きなビールではありませんが、今のところ、日本では(たぶん)最もポピュラーなビールです。

さて、まずスーパードライとは何か。アサヒビールが1987年3月に販売開始したビール飲料です。「日本の食卓に合うビール」を目指し、80年代半ばより研究、開発がスタート。試行錯誤の末、1987年に満を持して世に出たビール。それがスーパードライなのです。

スーパードライの特徴は何か。一番搾り(キリン)やプレモル(サントリー)と比して、混ぜ物が多いことです。普通でしたら、ビールの原材料というのは麦芽、ホップ、そして水、これだけです。対してスーパードライの場合、麦芽の使用量を極力減らし、米、コーン、スターチ(でんぷん)を混ぜています。これをビールと呼ぶことに、若干の抵抗があるのです。



アサヒスーパードライ(缶)

アルコール度数:5%
原材料:麦芽、ホップ、
米、コーン、スターチ
販売開始:1987年3月

File: Asahi SUPER DRY 20110111.jpg
from the Japanese Wikipedia
(2011年1月11日撮影)

こういうことを言うと、半畳を入れてくる人がたまにいます。「確かにドイツの場合、ビールは麦芽とホップしか使わないケースが多い。そして日本はドイツのビール作りを範としてきた。それは認める。でもそれ以外の材料を使ったビールだって、世界中に無数の例がある。それを思うとスーパードライだって特におかしいというわけじゃない。お前はドイツの回し者か」みたいなことを、口角泡を飛ばしながら言ってくる人がね、たまにいるんですよ。

別に私には、ドイツに義理立てする理由なんてありません。行ったこともないしドイツ人の知り合いもいない。だからドイツ式がどうこうと言うのじゃなくて、単に味というか、趣味が合わないだけのことなんです。

スーパードライというのは、当時の日本の(平均的な)食生活を前提とし、それに合う食中酒として開発されたビールです。当時の日本では、油や塩、砂糖などの使用量がそれまでに比して増していました。それに伴い、料理の味付けが(それまでと比して)濃くなっていったそうです。たとえば、油脂購入量は1960年~1980年の20年で一世帯あたり約2倍に増えたのだとか。勢い、そういったモダンな食生活に合うお酒がマーケットでは求められ、それに応えたのがスーパードライだったわけです。

スーパードライの味の特徴はとにかく軽いことです。それまでの麦芽とホップのみのビールのような重みはなく、苦味も少ない。じつにさらっとしている。これがアブラっ気の多い料理にマッチしました。開発当初の販売目標は、年間100万箱だったそうですが、販売開始から2年後の1989年には年間1億箱の販売記録を打ち立てました。こうしてスーパードライは、アサヒビールの看板商品になったのです。近年はどうかと言いますと、「アサヒは平成13年以降、ビール類市場でほぼ一貫して首位を走りながらも、大黒柱のスーパードライの販売実績は6年連続で前年割れ」(産経新聞2019年5月30日)とのことです。

スーパードライが開発された当時は、日本のバブル期にあたります。好況に沸いていた時代です。翻って、当今の日本はというと、世界競争力ランキングは30位(IMD)、平均賃金はOECD35ヶ国中18位(OECD)というポジションにあります。「いや、日本はもともとこんなものだった、バブルの頃がちょっと異常だったんだ」。そう言う人もいます。とはいえ、バブル期の節よりは明らかに「貧困化」しているわけです。

ということは、バブル期の日本人の平均的な食卓と、当今の食卓では、総じて傾向が異なっているのではないか。だってそうですよね。80年代半ば、日本はそれまでより(おおむね)経済的に豊かになり、それに伴い食生活の傾向も変わっていった。それなら、そこから経済的に貧しくなったら、食生活の傾向もまたそれなりに変わっても決しておかしくはありません。

そしてスーパードライはもう近年の食卓傾向に(総じて)マッチしなくなってきているのではないか。そう愚考します。スーパードライが近年、不調気味になった背景にはそれがあるんじゃないかなと。平たく言えば、スーパードライはもう時代遅れなのかも知れないということです。もちろん、時代がどうとかじゃなくて俺はスーパードライのこの味が好きなんだ、という人も多くいると思いますし、それをどうこう言うつもりは毛頭ありませんが。





 

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