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■ 3月31日から4月29日にかけて、時計をフィーチャーいたします。







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あんこう鍋
西がフグなら東はあんこう、なんだって

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私は大阪に住んでいる。そう言うと、日常的に「てっちり」を食べている、と思う人もいるかもしれない。おあいにくさま。人生で一回しか食べたことないです。でもまぁそんなものじゃないかと思う。海外に行くと、たまに「日本人クジラ食う、良くない」と言ってくる外人がいるらしい(海外に行ったことがないので実体験ではないけど)。いやいや、日本人のほとんどはクジラ食ったことないぜ、たぶん。

てっちりというのはフグ鍋のことで、フグ鍋は関西名物であると認識している人も多いんだと思う。そのことに対して何のかんのと異議申し立てするつもりはない。だがしかし、である。そうなると西日本はフグが有名だとして(下関あたりはそれでホントに有名だよね)、東日本は何の魚なのさ。そんな疑問が出てくる。

答を先に言うと、あんこうだという。あんこう鍋。聞いたことないな、と思うんだけど、これは実際、東日本で(特に茨城県や福島県で)ドミナントな鍋料理らしい。なんと、あの水戸黄門も食べていたという。亡くなられた小菅桂子さんが『水戸黄門の食卓』(中公新書、1992)でそう語っていた。

ちなみに、実際の水戸黄門(徳川光圀)は諸国漫遊なんかしなかったらしい。あれはテレビのフィクションなんだって。



調理後のあんこう鍋
File: Nabe of angler fish after.jpg
from the Japanese Wikipedia
(撮影:2007年2月17日)

ちょいと待て、あんこうって何だ。そう思う人もいるかも知れない。えっと、チョウチンアンコウって聞いたことないかな。一言で言うと深海魚の一種なんだけど、まぁそのたぐい。あんこうは東日本では昔から食べられていて、江戸時代には五大珍味の一つとして重宝されていたらしい(ちなみに残りの四つの珍味は何かというと、鯛、ツル、ヒバリ、バン)。水戸藩から皇室に献上されていたという記録もある。

あんこうの卵巣は「ヌノ」と呼ばれ、美味しく食べられる。反面、オスのあんこうは卵巣を持っていないので(当たり前だよね)、高値がつくことはないし市場にもなかなか出回らない。こういう話を聞くと、同じ男としてはちょっと気の毒というか、居たたまれなくなる。



(茨城県)大洗あんこう祭で披露されたアンコウの吊るし切り
File: Oarai Anglerfish Festival 2014, Cutting Anglerfish.jpg
from the Japanese Wikipedia
(撮影:2014年11月16日)

どうやって食べるのか。大まかに言うと2パターンあって、味噌で仕立てるか醤油ベースの鍋にするか、である。中には「どぶ」と呼ばれる鍋もあるが、これは水を張った鍋にあんこうの肝を入れ、鍋に火をかけつつ肝を溶かしていくものらしい。それからあんこうの身や野菜を投入する、と。もともとは漁師の料理であるという。

で、フグの調理でも同様だけど、こういうのは「餅は餅屋」というか、あんこうの調理に慣れている人に任せるにしくはない。というのも、あんこうの肝には寄生虫がいるかも知れないという。だからして、ちゃんとした人に調理してもらうのがベストだと思う。素人はうかつに手を出さない方ががいいんじゃないかと。あん肝は、60度以上の温度で1分以上加熱すれば問題はないらしいけどね。

聞けば、あんこうの旬は冬で、主に11月から2月にかけてだという。へぇ、まさにこれからなんだ(執筆時点で10月下旬)。

それにしても、あんこうと聞くと、その響きから、志賀直哉の『暗夜行路』をつい連想してしまう。あんこうと『暗夜行路』に、何か通底するものはあるのか? 読んだことはないのでわからないけど。





 

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