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ボンカレー
世界で最初のレトルトカレー

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ボンカレーを紹介するのはある意味で容易い。1968年に世に出た、世界で最初のレトルトカレーであり、長らく湯煎でつくる方式だったが、2003年には、これまた世界で初めての「電子レンジでチンできる方式」を採用。現在(2021年)、「ボンカレーNEO」や「ボンカレーゴールド」などさまざまなヴァリエーションが店頭に並び、抜群の知名度を誇り続けている。発売元は大塚食品で、製造地は徳島県。

これで済む。そしてこれで十分な気もする。

実際に食べてどういうものかは、食べたことのある人は(当然)既におおむね知っているだろうし、未経験の人には「まあ一度食べてみなはれ」と言うほかない。だからグルメレポ的な話はしない。

当今、ボンカレーやその歴程を称える向きはあっても、非難する手合いはそうそういないと思う。少なくとも国内には。というのも、この五十年余り日本人はボンカレーやその後続商品をせっせと食べてきた。つまり日本人の圧倒的多数がボンカレーの恩恵を浴してきたのである。物心がつく頃にはもうレトルトカレーを習慣的に食べていた、という世代が社会の中核を占めるようになって久しい。日本人はこの半世紀をボンカレーと共に歩んできたと言って言い過ぎではないのである。

そんな状況下で、誰がボンカレーを進んで難じるだろう? それは自らの過去の一部を進んで否定するような所業である。結構な困難だと思う。

だから私は、敢えてボンカレーを難じてみたいと考える。物事には「良い面」があれば「悪い面」もある。ボンカレーの「良い面」だけを捉えてもう一方を見ない振りというのは、バランスが悪かろうと思うから。

かといって、ここで「ボンカレーを始めとするレトルトカレーの普及により、日本人は食に手をかけるということをしなくなった。そうして雑な態度が世間に定着し、飽食やフードロスが恒常化したのだ。実に嘆かわしい」━━みたいな生真面目な話をする気は毛頭ない。

あくまで個人的な範囲で思いつく難点を挙げたいと思う。

ボンカレーの難点。それは「つまらない」だと思う。センス・オブ・ワンダーがほとんどない。これは、この半世紀でボンカレーが日本中に普及したことによるマイナス面とも言えよう。ボンカレーの味は最早「定番」になっていて、メーカー自体、その定番性の虜囚になっている気がする(レトルトカレーの先駆者という立ち位置がそうさせるのか、あるいは大塚食品という会社の性格によるのかは判じないが)。

ボンカレーは「オーソドックスで堅実な味」を徹底している。その「ハズレのなさ」が支持される要因である反面、食べたときの驚きはそんなにない。これはレギュラー商品から限定品に至るまで、そうではないかと思う。もちろん、私とてすべての種類のボンカレーを制覇したわけではないから、きっぱり断言はできないけれども。

ボンカレーで驚くとなると、それは味ではなく、その調理方法によるものではなかろうか。

若い人にはピンとこないかも知れないが、ボンカレーが登場してから二十世紀後半の間、レトルトカレーというのはずっと「お湯を沸かして、そこに浸してつくるもの」だった。あの頃、電子レンジでレトルトカレーがつくれるようになるなんて誰も思わなかったろう。でも上述のように、二十一世紀が来たら、それは実現してしまった。今や「電子レンジでチンする式レトルトカレー」は当たり前にある。

してみると、ボンカレーとは「科学技術のオトシダネ」でもあるのだろう。

そのうち、パッケージの袋を開けたら瞬間的に熱くなるボンカレーなんてのも出てくるかも知れない。開封しただけで出来上がりの、ガスも電気も要らないレトルトカレー。あるいは、それ以前に石油や水などの天然資源が枯渇して、「科学による進歩」という十九世紀由来の傾向が終わるだろうか。

しかし、この記事はボンカレーを難じているのかな? ま、いいか。





 

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