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■ 9月30日から10月30日にかけて、「郷土料理」をフィーチャーします。







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お百姓さんが作ったスイートポテト
スイートポテトって和菓子ですよね?

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皆さん、こんにちは。今回のお題は「お百姓さんが作ったスイートポテト」です。これは丁井という徳島県鳴門市のサツマイモ農家(もちろん栽培している品種は「なると金時」です)が作るスイートポテトです。大阪住まいの私は、近所のスーパーでたまにこれを買うのです。


が、それはそれとして、上の副題は何なんでしょうか。スイートポテトというのは和菓子にカテゴライズして然るべきであろう、と言っているわけですが、取り敢えず(生産者や味の話はいったん脇に置いて)こっちの話を先にしたいと思います。上の文章を読んで「え、スイートポテトって、外国から伝わったお菓子じゃないの?」と思われた方も多いかと愚考するからです。「だって、スイートもポテトも英語じゃん」と。

そうなんです。スイートポテトは、日本発祥のお菓子なんですね。最初にその原形が作られたのは明治時代だそうです。1945年に太平洋戦争が終わり、その後、ベビーブームによる人口増を背景に日本経済は復興から経済成長へと至るわけですが、その過程では「食の商い」が乱立しました。スイートポテトはそこで全国的なものになった━━らしいのです。

ちなみに、サツマイモといえば「焼きイモ」を連想する方も多いかと思いますが、リヤカーや軽トラで石焼きイモを売るというスタイルも、確立されたのは戦後です。戦中はどうかと言いますと、そもそもサツマイモ自体が1942年に制定された食糧管理法によって国に統制されていたので、焼きイモ屋という商売は成り立ちようがなかったのです。今日のようにサツマイモの流通がある程度自由になったのは、1950年のことでした。

事程左様、サツマイモは日本の近現代と密接に関わってきた作物で、そういう土壌があればこそ、スイートポテトというお菓子も日本で生まれたわけです。

だからして、そもそも海外ではスイートポテトを見かける機会自体がそんなに(日本国内ほどには)ないでしょう。たぶん。

英語圏でスイートポテトと言ったら、それはサツマイモのことです。あるいは文字通り「甘いじゃがいも」を指すことになるかも知れない。ポテト(という単語)には「かかとの穴」という意味もありますから、使う状況によっては、アブノーマルなプレイ方面の術語として機能する可能性もあります。

いずれにせよ、日本人が海外で「スイートポテト」と言っても、日本のそれとして通じることはほぼないと思います。スイートポテトは「タッチパネル」や「アイドル」と同様、日本でしか通じない和製英語なのです。

余談ですが、2020年、新型コロナウイルスのパンデミックが世界的な問題になった折、感染拡大のことを「オーバーシュート」と表す個人やメディアがいくつかありましたが、この「オーバーシュート」も(感染拡大という意味で使う場合は)和製英語です。英語圏では通じにくいのでお気をつけ下さい。

すでに話は逸れに逸れて、徳島のサツマイモ農家からだいぶ離れていますが、仕方ありません。だって「お百姓さんが作ったスイートポテト」は、前述のように、丁井という徳島県のサツマイモ農家が作ったスイートポテトで、であれば先ず説明すべきは「そもそもスイートポテトとは━━」であり、それ以外は「実際に食べてみなはれ」としか言いようがないのです。


しかしそれだけで済ますのも無愛想なので、最後にこんなお話をしましょう。昨年(2020)の農水省の「作物統計」によると、サツマイモの都道府県別生産量ランキングで徳島県は、鹿児島、茨城、千葉、宮崎に次ぐ5位にランクインしました。そうなると地理の特性上、大阪でサツマイモを食す場合、それは徳島産のイモの可能性が高くなります。徳島産のサツマイモは、大阪府民にとって馴染みの味なのです。

それをよその地域の人が食べてどう思うか。そこまでは分かりません。九州の人などは「サツマイモったら、やっぱ九州が本場だろう」と自負しているかも知れません。関東圏の住民は「サツマイモといえば千葉か茨城」のイメージを強く持っているかも知れない。それぞれにそれぞれのバイアスがあるだろうと思います。

「でもまぁそれはそれとして」で、大阪では徳島産のサツマイモがポピュラーなんですよ、という所で、今回の「お百姓さんが作ったスイートポテト」なのです。





 

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