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いちご煮
まだまだ青二才の、青森県の郷土料理?

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青森県八戸市周辺といえば、冬春いちごで有名なエリアです。冬春いちごとは何かと言いますと、だいたい十一月から翌年の春にかけて収穫されるいちごのことです。八戸市は県東部に位置しており、太平洋に面しているため、冬でも日照時間が長く、その日差しを活用していちごの栽培が盛んなのだとか。

だもんですから、青森県八戸市周辺には「いちご煮」という郷土料理があると最初に知ったときは、地元の特産品であるいちごを煮たものかと思いました。それってジャムみたいなもん? みたいな。でも違ったようです。

いちご煮は汁物の一種で、端的に言うなら「ウニとアワビのお吸い物」です。八戸市は全国有数の水揚げ量を誇る漁の町。海の男(女でもいいんですけど)で「八戸漁港」という名前を知らない手合いは、たぶんいないでしょう。



いちご煮
File: Ichigoni.jpg
from the Japanese Wikipedia
(撮影:2021年2月13日)

そういう地域柄ゆえ、滅多なことでは海の幸に事欠きません。とはいっても、ウニやアワビが希少であり高級品であることに変わりはなく、ためにいちご煮は、八戸市周辺地域においては「上客へのもてなしの一品」として親しまれてきたといいます。

と、ここまで来て「なんでそれが『いちご煮』なの?」と疑問に思われた方もおられましょう。具材にいちごは使われていないし、いちごで出汁をとるとか味付けをするとかでもない。はっきり言って、「いちご煮」を構成する要素のなかにいちごは入っていません。それがどうして? と。

種明かし(というほどのものでもありませんが)すれば、なんてことはありません。ウニの卵巣の赤みがいちごっぽく見える。それで「いちご煮」と名付けられた。そういうことだそうです。日本国内でいちごが栽培されはじめたのは十九世紀後半、明治に入ってからですから、明治以前にはこの汁物は存在しなかったのかも知れません。もちろん、違う名前で呼ばれていた可能性もなくはないですが、それなら古い方の名前も根強く残っているでしょうし。

聞くと、八戸が商港になったのは、およそ九十年前、昭和に入って間もなくのことだそうです。ともすれば、そのあたりでいちご煮は半ば自然発生的に生み出され、普及したのかも知れません。



青森県八戸市 種差海岸

出典:TanesashiBeachFromAshigezakiObservatory.JPG
from the Japanese Wikipedia
(撮影:2012年10月7日)


余談ながら、八戸という名前は全国的に有名ですが、じつは東北エリアのいろいろな場所に一戸から九戸(という地名)が点在します。私が確認したかぎりでは四戸だけが見つかりませんでしたが。これらの地名の歴史は存外に古く、一説には平安時代末期から戦国時代にかけて名付けられたと言います。それを思えば、八戸というのは結構な歴史がある町なのかも知れません。

その歴史に比すれば、いちご煮なんてまだ「地域の新顔」だ。地元の人はそう認識しているかも知れないですね。





 

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