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い・ろ・は・す
「い・ろ・は・す」の「ロハス」を探して

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2009年5月、日本コカ・コーラが「い・ろ・は・す」(以下、いろはす)という天然水飲料を、片手でべこっとつぶしやすい独特のペットボトルに詰めて販売開始した。2019年現在、大抵のスーパーやコンビニで「いろはす」は恒常的に陳列されているかと思う。

まず、この「いろはす」というヘンテコな名前は何だ。これは日本語の「イロハ」と「ロハス」を組み合わせた造語であるという。イロハは分かる。物事の「初歩」とか「手始め」とかの意であろう。しかし、ロハスって何だ。日本語でロハというと、「無料」とか「タダ」を意味する符牒である。それなら、ロハスとは、なるべく身銭のかからない節約志向のことだろうか。

そう邪推したのだが、どうも違うらしい。LOHASとはLifestyle Of Health And Sustainability━━「健康で持続可能な生活様式」であるらしく、発祥は20世紀末のアメリカだという。英語で言われると小難しく思えるが、要は「地球や自然と折り合いをつけて生きていこうぜ」であろう。


「い・ろ・は・す」

内容量:555ml
硬度:採水地による
採水地:北海道、岩手、富山、
山梨、鳥取、宮崎、熊本
確かに、無理はない。アメリカはもともと「移民の国」である。彼らは母国を捨て、アメリカに移ってきたときに「原生的な自然」を目の当たりにした。アメリカ大陸には、母国でも見たことがない「Mother Nature(母なる大自然)」が手付かずの状態で残っていたのである。まさに「新世界」であった。そしてそれを目にした彼らは狂喜乱舞し、その自然をとことん破壊し尽くした。彼らのいう「開拓民」は荒野を開拓したわけであるが、それはとどのつまり、手付かずの自然を片っ端からなぎ倒していったということである。

そして20世紀末、かつてのアメリカが誇っていた「大自然」は回復不能なまでに荒廃した。バカなの? と思う人もいるかもしれない。しかし、それが「アメリカの歴史」なのである。だから彼らが「ううむ、いくら何でもまずすぎやしないか? もうちょっと手を緩めて、この自然と俺たちの営みを、うまく共存させてった方がいいんじゃないの?」と思ってもおかしくない。遅すぎんだろ、とは思うけど。

そしてコカ・コーラは、そのアメリカの企業である。だから、21世紀に日本コカ・コーラが「ロハス」を掲げた商品を出しても、そこまで不思議はない。

不思議はないが、違和感はある。

「いろはす」は、簡単につぶせる独特のペットボトルで売られている。そして敢えて言うまでもなく、ペットボトルはプラスチックなので自然に分解されない。この時点ですでに「環境に優しい」とは言えないように思える。はっきり言って、まだ紙の容器のほうが、なんぼか「ロハス」なんじゃないか、と愚考するのだけど。

また、2019年現在、同製品のために北海道、岩手、富山、山梨、鳥取、宮崎、熊本の7カ所で採水が行われているが、実は2011年に、愛媛でも採水が開始されたのである。しかし2013年、わずか2年ばかりで愛媛での採水は操業停止に至った。これも気にかかるところである。

「いろはす」の愛媛での水源地であった西条市は、名水の地として有名だったものの、近年では地下水の低下と塩水化に悩まされている。これは結構深刻な問題らしく、西条市と、やはり水問題を抱える松山市で、協力して水問題を解決していきませんか、と愛媛県が提案したほどである(2019年4月)。

その前段階には、「いろはす」を筆頭とする幾つかの天然水ブランドにより、地下水の採水が行われていた。だからどうだと言うのではない。ただ、個人的には、それで「ロハス」だとか「持続可能」だとかを言われても、違和感しか覚えませんな。それだけのことである。アメリカの歴史を他山の石にできればいいのだけれど。

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