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『イソジンのど飴』
2018年になって「イソジン」ののど飴が出た背景

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2018年、大阪を拠点とする味覚糖株式会社のブランド「UHA味覚糖」のラインナップに新たなのど飴が加わった。『イソジンのど飴』である。




おそらく大多数の日本人は「イソジン」という名前を聞いたことがある。うがい薬として、またはヨウ素剤として、高い知名度を誇っているはずだ。しかしその商標はどこに帰属するのかとなると、あまり知られていないと思う。むろん、味覚糖の登録商標ではない。その登録商標を握るのはムンディファーマというアメリカ発祥のグローバル製薬企業である。

昭和中期以来、「イソジン」は日本人の多くにとって、馴染みのあるものだった。ムンディファーマは1961年に明治製菓(当時)と技術提携し、以降長らく有効成分の供給を行うのみの存在にとどまっていた。日本で「イソジン」がここまで広まったのは、明治のネットワークや産業技術力によるところが大きかったと言って差し支えはないだろう。しかしその関係性が、2015年になって突然崩壊した。

2015年12月、ムンディファーマはメイジ・セイカ・ファルマとの提携解消を発表した。今後はムンディファーマが自社で「イソジン」を製造してゆくと宣言したのである。もっとも2018年現在、日本国内での「イソジン」の販売については、塩野義製薬グループに委託されている形ではあるが。

その流れで『イソジンのど飴』が到来した。これは何を意味するのか。




医薬品のフィールドにおいて、日本はアメリカに次ぐ世界第2位のマーケットである。グローバル企業は、投資を続けないとその様態を維持できない。が、今や投資先が世界規模で見当たらない時代である。さらば日本における存在感の強化を図り、そこでいくらか儲けよう。かような考えがムンディファーマ内にあるのだろう。

2018年現在、日本という国は、政治的には海外からかなり白眼視されている。自民党が与党に返り咲いた途端、記者クラブは密室化した(外国人記者の排斥が進んだ)し、福島原発の事故では、放射能汚染された水を海に垂れ流して、それを安倍総理は「原発はアンダー・コントロールにある」と海外に向けてうそぶいた。もはや中国共産党や朝鮮労働党と選ぶところのないこの政体が諸外国からの信頼を得られるかどうかは子供でもわかる。

しかし何といっても、日本国内は革命や治安悪化などの心配は諸外国に比べて少ない。つまり諸外国と比して、市民経済の安定性が高いのである。加えて、高齢化社会の折、医薬品の需要は増すと見込める。グローバル企業を駆動するのは、社会的倫理やイデオロギーではなく「投資と回収」の原理である。ムンディファーマが日本の市場への関与を強化する方針を採っても、不思議はいささかもない。たぶん、日本国内の製薬会社の買収も(少なくとも2015年の時点では)彼らの視野には入っていたはずだ。

これは現在の政権の基本方針とも相性が良い。自民党の支持母体(のひとつ)である経団連はほぼグローバル企業で構成されている。安倍政権はグローバル企業には好都合な政策を次々に採ってきた。おそらく安倍政権は、基本的にはシンガポールを理想的モデルとした国家運営を目指しているのだろう。つまり国体のほとんどをグローバル企業に売り渡してしまいたいわけだ━━果たしてそれを「国家運営」と呼べるのかはともかくとして━━。

2018年末現在進められている「水道民営化」も、その一環として挙げられよう。きっとヨーロッパあたりの企業が、日本の水道事業に参入して儲けようと舌なめずりして待っているんでしょうな。その折に閣僚や高級官僚がいくらか儲けられれば、後は野となれ山となれ。国民の負担は増えるが、知ったことじゃないぜと。ともあれグローバル企業に(だけ)都合の良い政権であることは疑いの余地がない。

日本の政権の売国性を背景にした、グローバル製薬企業の日本市場への強襲。そういった脈絡で『イソジンのど飴』は2018年、姿を現した。これが今後どのように市場で評価されるものか。そこまでは知らない。


【公式】おいしさはやさしさ UHA味覚糖




 

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