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■ 12月31日から1月30日にかけて、「一九九六年の音楽」をフィーチャーします。







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京番茶
薫香漂う、京都の番茶

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この京番茶の記事は、丁度十年前(二〇一五年)に一度公開した。本稿はその改訂版にあたる。

改訂するはこびになった理由はなにか。当時この京番茶を販売していたのは、井六園という茶商であった。ところが今はもうその井六園がない。彼らはあの「コロナ禍」の最中だった二〇二一年に、「京都茶の蔵」社へと社名変更したからである。販売元が変わった以上、それに合わせて記事も改訂するのが妥当かと思い、今回(ようやく)改めることにした次第である。



井六園時代の京番茶(京ばん茶)

井六園は、創業が十九世紀前半という老舗の茶商ではあったのだが、今世紀に入ってからはあまり良い噂を聞かない会社でもあり、二〇〇七年には民事再生手続きに入っている。当今は「ネット社会」であり、悪い評判が一瞬で千里を走るばかりか、その汚名が何年経ってもぬぐえなかったりもするから、同社の人間にとって「井六園」という看板は、最早ブランドではなく負の遺産にしかならなかったのだろう。そうでなければ、絶好のアピールポイントになるはずの老舗の看板を、わざわざ外すなどはすまい。

問題は、自分達の屋号を外して、ではどういう名前を新しく名乗るかである。外部に対して自分達が提示できる最大のアドヴァンテージはなにか? やはり京都で茶商を営み続けてきたことだろう。東京と同じく、京都という地名は、対外的にはブランドとして機能し得る。よし、では社名に「京都」と「茶」は入れましょうか━━みたいな井戸端会議がどこかで開かれて、現在の「京都茶の蔵」に改名したのではと、個人的に邪推している。

ここまで読んできて、訝る向きもあろう。「おい、黙って聞いてりゃなんだかろくでもねえ会社みてえじゃねえか。そんなトコのお茶を紹介されて、じゃあ飲んでみましょうってなると思ってんのか?」と。

読んで頂いた方にはお分かりかと思うが、私は「京番茶」についてはここまで一言も苦言を呈していない。あくまで旧井六園という茶商が、今世紀に入って民事再生や社名変更に至った事実と、そこから推量される蓋然性とをクールに叙述しただけである。

ここ十数年、芸能界やネット界隈はアイドルが供給過多と言っていいくらいに乱立していて、その中には売れずに埋没して人知れずフェイドアウトする例も多くある。売れなかった原因は、アイドル側に大衆を惹き付けるだけの魅力がなかったからということもあれば、芸能事務所がどうしようもないボンクラ、あるいはタレントやそのファンから搾取することしか考えていない非人道的な会社だったからということもある(もちろんこのどちらでもなく、単に運がなかっただけという例もゴマンとあろうが)。

このうち、後者の例が旧井六園と京番茶との関係性にあてはまると私は思っている。彼らは、京番茶をはじめとする茶商品のクオリティーが悪くて民事再生手続きに至ったわけではない。あくまで運営主体とその方向性に度し難い問題があったのである。アニメ制作会社のガイナックスは根深い問題のある会社であったが、彼らがプロデュースした『新世紀エヴァンゲリオン』は間違いなく一級の作品だった。それと同じである。だから京都茶の蔵社に厳しい眼差しを注ぐのは当たり前としても、京番茶を難じる道理は差し当たりないということになる。

で、ここからが京番茶の説明である。

京番茶とは、文字通り「京=京都」の「番茶」である。では番茶とはなにかという話になるが、これは通常「三番茶」を指す言葉として広く使われる。春に摘むのが一番茶、初夏に摘むのが二番茶、そしてそれ以降に摘むのが三番茶。茶葉は摘んでもまたすぐ芽を出すのでこういうサイクル形成が可能なのだが、ために番茶は新茶(一番茶)に比べてカテキンの含有量が多く、渋めの味になり、値段も安めになる。つまり比較的「低ランク」のお茶なのである。

ところが番茶は、椙山女学園大学生活科学部の中村好志によると、お茶の中でも抗プロモーション活性が図抜けて強いらしい。抗プロモーション活性とは、乱暴に言えば「ガン遺伝子が発動するのを防ぐ作用」のことである。私は医学者ではないのでよく分からないのだが、要するにガン遺伝子は体内に存在するだけでは無害で、プロモーターと呼ばれる遺伝子だかDNA配列だかが、ガン遺伝子のスイッチをONにすることで、初めて身体のどこかにガンが発症するというシステムらしい。つまりこのプロモーターを抑制できれば発ガンを防げるわけで、そういう効果が一番強いお茶が番茶なのだとか。もっとも、これはおよそ二十年前に発表された話なので、現在進行形で通説がどう言っているかは寡聞にして知らないが。



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と喧伝しておいてなんだが、京番茶はフツーの番茶とは違う。京番茶は加工の際に強く焙煎するため、渋みがどうというより、スモーキーな「薫香」がその特徴になるのである。この匂いが許容できるかどうかは人によるだろうから、強く勧めるなどはできない。まぁこういうお茶もあるんですよ、というあたりでお茶を濁して終りにするのが吉か。

京都茶乃蔵




 

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