この前まで暑かったと思ったら、もうめっきり寒くなりましたね。なんて月並みな時候の挨拶はともかくとして、木枯し吹きすさぶ季節にも、アイスを食べる人はいます。というか、今時そんなの大して珍しくもありませんよね、やるかやらないかは人それぞれですが。しかし何事にも始まりがあるように、「夏以外の季節でもアイスを食べる」習慣においても、パイオニアは存在したのです。ロッテアイス(以下、ロッテ)の「雪見だいふく」というパイオニアが。
「雪見だいふく」が世に出たのは昭和56年。それまでは、(かき氷を含む)アイスなどの冷菓は夏に食べるのが当たり前、冬に冷たいものなんてわざわざ食べないぜ、という風潮が一般的でした。昭和50年のアイス販売量のデータを見ると、4~9月の夏季と10~3月の冬季では、およそ4:1の差があったくらいです。
しかしロッテはこう考えました。夏季よりも圧倒的に少ないとはいえ、冬季に全く販売量がないわけではない。ということは消費者のニーズにさえ合えば、冬季にもアイスの市場は開けるのではないかと。そこで菓子メーカーの発想も盛り込みつつ、従来とは違う新しいアイスの開発が試行錯誤されたのです。
やがてアイスクリームをマシュマロで包んだ「わたぼうし」(昭和55年)を前身とし、マシュマロの代わりにおもちを用いた「雪見だいふく」がデビューしました。
販売されるや否や、「雪見だいふく」は全国の子供や女性を中心に、超がつくほど大ヒット。冬にアイスを食べるという、それまでは奇習だったものを見事に定番にしました。昭和59年には、中身の栄養価を少し変えた、学校給食向けの「雪見だいふく」まで登場したほどに、市民権を獲得したのです。
発売から35年以上、これまで「雪見だいふく」の味には様々なヴァリエーションが登場しました。イチゴ味、チョコレート味、今年(平成29年)のシュークリーム味などなど。しかしやっぱり基本はバニラ味。「雪見だいふく」の中心的存在であるバニラ味は、今でも毎年およそ70億円を売り上げる稼ぎ頭なのだそうです。