日本は広い。一口に給食と言っても、その内容は地域によって、また時代によってばらばらだ。たとえば牛乳なんて、戦後間もないころにはそんな贅沢品が子供達に供給されるはずもなく、脱脂粉乳だった。クジラの竜田揚げだって、今でも供給される学校はレアだろう。滋賀の学校のなかには給食にブラックバスが出る所もあると聞くし、北海道根室市の給食ではカニが出るのだとか。
別に給食の多様性がメイン・トピックではない。あくまでも前置きだ。ここからが眼目。九州の給食では、ムースと呼ばれるアイスが頻出する。他の地域の人からすると、名前だけでは想像がつかないだろう。「そんなもん、うちらの時には無かったよ」と。九州で小中学生時代を過ごした人には、懐かしい話かもしれない。いずれにせよ、読者の大多数はもう給食と縁がないはずである。
だがそれを食べてみたいと言うなら、それは可能だ。セリア・ロイル(旧ロイヤル食品)の「給食でおなじみのムース」を買えば済む話だからだ。
セリア・ロイルは主に九州エリアの学校給食用デザートを開発・供給してきた会社である。旧社名の「ロイヤル食品」と聞けば、九州出身の方、あるいはアイス好きの方には「ああ、あの会社か」と思い当たられるかもしれない(社名変更は2014年)。
「給食でおなじみのムース」は、同社の学校給食用デザートを市販用にアジャストしたもので、2011年10月にセブンーイレブンで発売開始(九州地区限定)。独特の食感が好評に繋がり、2013年には全国のセブンーイレブンで販売されるようになった。その後2度のモデル・チェンジを行なっていることもあり、今も全国のセブイレにあるかというと、心許ない。少なくとも私の近所のセブイレにはない。
が、案ずるには及ばない。九州以外にお住まいの方でも、ちょっと足をのばして九州へ行けば容易にありつけるし、インターネットでも入手は可能だ。
アイス食品であるからして、冷凍して食べてももちろん美味しい。しかしそのままで、つまり多少やわらかくして食べてもこれまた美味しい。そんなユニークさが「給食でおなじみのムース」のアイデンティティと言えよう。ババロアみたいな、クリームみたいな、不思議な食感である。