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鯛めし
愛媛県南部で「鯛めし」と言うと

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鯛めし。そう言われれば、おそらく大多数の日本人は、漠然とでもイメージできるものがあると思う。あぁ、あれね、みたいな感じで。ただし、多くの場合そこでイメージされたものは、焼いた鯛を、味付けご飯と組み合わせた料理であろうと愚考する。勿論それが悪いとか間違いとか言うつもりはない。ただ、広い日本には、それと異なる「鯛めし」だってある。今回の話はそれが主題である。

西日本の四国は愛媛県。この愛媛県の南部を「南予地方」という。そこでの鯛めしとは、鯛の刺身をタレや薬味で和え、それを白飯と食べる、というものである。つまり当地での鯛めしは、生モノなのである。



鯛めし(@宇和島市)
File: Taimeshi at Nanyo.JPG
from the Japanese Wikipedia
(撮影:2008年1月20日)

なんでそうなるのか? 勿論そこには当地の事情が濃密に関係している。一口に「愛媛県」と言っても、その総面積は約5700平方キロメートルと広大なもので(ちなみに東京都の面積は約2200平方キロメートル)、つまり愛媛と言っても地域別にいくつかの「顔」があるということである。

元博報堂の佐藤可士和が宣伝を担当したということもあって、愛媛と言えば、今治タオルを連想する人も昨今では多いかと思う。しかし今治は愛媛の東部、通称「東予地方」に属する町である。この東予地方は、繊維業や造船業が盛んな、いわゆる「工業の町」である。ということは、南予地方は、それとは違う特色を持っているわけである。

南予地方は、はっきり言って、工業や製造業という面ではそんなに目立つ所のない地域である。じゃあ何が盛んなのかというと、漁業や農業などのいわゆる第一次産業である。もうここで察しのつく方もおられよう。大分県と愛媛県の間には「豊後水道」と呼ばれる海域があり、その愛媛県サイドを宇和海と呼ぶが、この宇和海ではマダイの養殖が盛んなのである。2015年の農林水産省の統計によると、愛媛県は養殖マダイ生産ランキングで全国1位、天然マダイの漁獲量でも全国3位の座にランクインしている。



宇和海
File: Uwa Sea Pearl Farm.JPG
from the Japanese Wikipedia
(撮影:2009年8月11日)

つまり南予地方では、新鮮な鯛は地域の名産品なのである。それなら新鮮なうちに食べちゃおう。その方がずっと美味しく頂ける。南予地方の人達にそういう了見があることは想像に難くない。かくして、かの地で「鯛めし」と言えば鯛が刺身になって出てくるのではないかと私は考える。

「郷土料理」とはローカルな特色に根ざした料理である。愛媛南部では、鯛は名産品であり、新鮮なうちに食するのはそんなに難しいことではない。そういう特色があるからこそ、かの地で「鯛めし」は、鯛の刺身を、タレや薬味で和え、それを白飯と食べる料理として成立するのである。





 

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