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たくあんの煮たの
近畿北部、北陸の「たくあんを煮るやーつ」

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こんにちは皆さん。本日のお題は「たくあんの煮たの」です。一瞬「は?」って思いますよね。私も思いました。どういう料理かは何となくわかりますが、なんじゃその身も蓋もないネーミングは、と。でもこういう名前みたいです。

これは読んで字の如く、たくあんの煮物です。福井、石川、富山などの北陸地方、それに京都や滋賀などで一般的な家庭料理です。要するに、北陸・関西の日本海に面した地域の郷土料理ですね。もっとも、同じ料理でも地域によって呼び名はばらばらで、たとえば主に福井、石川地域では「たくあんの煮たの」という呼称が一般的ですが、滋賀では「贅沢煮」、富山では「いりこぐ(いりごき)」と呼ばれるのだとか。また、石川県内でも一部地域では「おもくじ」という呼称を用いると言いますが、若干ややこしいので、今回は「たくあんの煮たの」で統一しておきますね。



滋賀県内での「贅沢煮」
File: Zeitakuni.jpg
from the Japanese Wikipedia
(撮影:2011年3月1日)

え、そもそも「たくあん」って何かって? お漬物の一種です。大根をヌカと塩などで漬けた食べ物です。何のために漬けるかというと、もちろん美味しくするためというのもありますが、保存性を上げる(長持ちさせる)ためでもあります。今はスーパーやコンビニで漬物を買うというのが主流かもしれませんが、冷蔵技術が未発達だった昔は、それぞれの家庭でめいめいに漬物を作っていたみたいです。

たくあんはどうやって作るのか? まず大根を何日か日干しします。そうすると大根はしなびてきます。それを何らかの容器に入れて、ヌカ(主に米ヌカ)と塩でしばらく漬けます。期間はお好みによってまちまちです。1か月という所もあれば数か月という所もあります。だいたいが黄褐色の甘い大根に変化します。これはヌカ(の中にある麹)と塩の作用です。デンプンが分解されて、糖分が出てくるんですね。

大根は(主に)秋に収穫される野菜です。だから大根を漬け始めるのは、だいたい年末。たぶん、昔は越冬する際に重宝したんでしょうね。「たくあんの煮たの」に使うのは、年末から翌年の初夏にかけて長く漬けこまれた、いわゆる「古たくあん」がメインだそうです。

作り方は地域や家庭によってばらばらですが、だいたいは以下の通りです。古たくあんを薄く輪切りにします。水をいっぱいに張った鍋を用意し、そこに古たくあんを投入。塩抜きをするんです。だいたい30分~1時間程度。塩抜き後、水を入れ替えて、ふにゃっとやわらかくなるまで煮ます。この煮る際には強い臭気を伴いますので、換気に気を付けてください。また、何度か水を取り替えながら煮るのが常みたいです。

古たくあんがやわらかくなったら水を捨て、油と醤油、出汁を少々ずつ加え、さらに煮ます。古たくあんに醤油の味が浸み込んだら、火をストップ。仕上げに白胡麻や(輪切りにした)赤唐辛子をふりかけ、出来上がりです。富山では醤油ではなく、味噌と酒粕で煮つける所もあるみたいですが。

留意点は、塩抜きしたたくあんは日持ちしないということです。状況にもよりますが、たいていは1日くらいしか持ちません。速やかに調理して、速やかに食べるようにしてください。でもそういう点を思うと、「贅沢煮」という名前が(滋賀県で)つくのも合点が行く気がします。だって、塩とヌカで漬けるのは、大根を長持ちさせるためでもあるわけですよ。それを塩抜きして、日持ちさせなくするんですからね。贅沢っちゃ贅沢です。





 

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