一説には、盛岡がわんこそばの起源であるという。祭事などで、地主が村民にそばをふるまう折、対象があまりの大人数のため、通常のふるまい方では間に合わず、かようなシステムが開発され、やがて早食い、大食い選手権などに用いられるようになったとか。食うに困らなくなった江戸時代にはすでに大食い選手権のようなものがあったとされるから、日本人はもともと早食い、大食いが好きなのかもしれない。
明治40年(1907年)創業以来、盛岡で割烹料理、そば料理を提供し続ける「東屋」は、わんこそばの老舗としても知られる。それで有名になりすぎて、大盛況(土日に行かない方が吉)なのだろう。整理券を配られても、なかなか順番が来ないこと、ままあり。わんこそばにチャレンジするのではなく、そばを堪能したいなら、他のメニューを頼んだ方が早く呼び出してもらえるので、空腹の時にはこのパターンをおすすめする。どうせ丼モノを頼んでも、そばは付いてくるのだから。
どうしても杯数を競う、下世話なイメージがつきまとい、言うなれば早食いや大食いを目的としていなければ、わんこそばなど食べないなんて人も多いかと思う。しかし元々はもてなしの料理であるため、本来の自分のペースで味わいながら食べるのも、オツなものだ。そば自体は美味だし、温かいからお腹にも優しい。無論、胃袋と食欲に自信をお持ちの方は、数で覇を競うのも一興。
ちなみに「東屋」では、100杯食べると、東家オリジナル「わんこそば証明手形」が進呈されるシステムになっている。