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ヱビスビール
日本最古の「麦芽100%ビール」?

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以前、「水曜日のネコ」を紹介する折、日本で一番ポピュラーなビールの種類はピルスナーであると書きました。では、現在流通しているビールのうち、純粋なピルスナー━━つまりいわゆる麦芽100%ビール━━として最古のものは何か。サッポロビールが1890年より脈々と製造しているヱビスビールになるんじゃないかな、と思われます。

時は明治の世。当時の資本家たちが、日本の急速な欧米化に対応するべく、日本麦酒醸造會社を設立しました。西暦で言えば1887年のことです。文化、風習、思想、様々な面で、とにかく西洋諸国に追いつかねばならない。そういう焦燥感と切迫感が空気として慢性的に漂っていた時代です。欧米ではビールという酒が広く人気らしい。よっしゃ、それなら日本でもビールを醸造できるようにならなあかんな。そんなこんなで、同社が設立され、ドイツ人技師を招き、懸命なビール造りが続けられました。

3年後の1890年、同社より「惠比壽麦酒」が発売されました。これがヱビスビールの原形になります。現在で言えば一本あたり約3千円くらいの値段で売り出されたのですが、瞬く間に好評を博し、たちまち東京の名物となりました。



ヱビスビール
アルコール度数:5%
原材料:麦芽、ホップ
内容量:350ml
販売開始:1890年2月

「ちょっと待って」はい、何ですか。「ヱビスビールってサッポロビールから出てんじゃん?」いかにもタコにも。「だったら北海道じゃないの? 東京でいいの?」いいんです。というか、今でも(サッポロビールを含む)サッポロホールディングスの本社は東京にあるんです。北海道じゃないんですよ。

東京の人はご存じでしょうが、東京の渋谷区に恵比寿という地名があります。実はこれ、ヱビスビールが由来なんです。1901年。20世紀になってもなお「惠比壽麦酒」の人気は衰え知らずで、恵比寿停留場という、ビールの出荷用の貨物駅が造られたほどでした。それから5年経った1906年、この貨物駅の傍に一般向けの駅が建造されました。これが現在まで残る「恵比寿駅」になります。そこから恵比寿という地名が、駅の周辺に広まっていったみたいです。もっとも、肝心のビール工場は昭和末期に、千葉県に移転しちゃいましたけどね。

そんな会社がなんで「サッポロビール」になったのか。それはヱビスビールの話の本筋とは直截的には関係ないので、はしょります。お手数ですが、ご自分で調べてみてください。

で、くだんの「惠比壽麦酒」ですが、第二次大戦の折には製造中止の憂き目に遭います。原材料の調達が困難になり、おまけにビールが配給制になったりしたので、無理からぬことでした。つくづく戦争ってのは、庶民を幸せにはしませんね。ともあれ、しばし休眠状態にあったヱビスビールですが、1971年12月に復活。翌年には初の缶ビール版も発売と、ここからは現在まで、ほぼ一直線です。

もちろん、それぞれの時代に、多少のリニューアルはありました。たとえば当初は熱処理を施したビールだったのが、1986年に生ビール化、つまり熱処理を施さなくなったりと、まぁいろいろ。原料にしても、1971年の復活後半年ほどは副原料を入れざるを得なかったみたいです。もっとも、半年ですぐ(現在のように)麦芽100%になったみたいですが。



復刻特製ヱビス
アルコール度数:5%
原材料:麦芽、ホップ
内容量:350ml
販売開始:2019年4月(期間限定醸造)
備考:1986年以前と同様、熱処理を施している






 

水曜日のネコ
週の半ばに、苦みの少ないまろやかなビールを。