日本語 | English

■ 8月31日から9月29日にかけて、「日本のアイス」をフィーチャーします







Atom_feed
チョコモナカジャンボ
「チョコモナカ」の終着点?

LINEで送る

「チョコモナカジャンボ」といえば、森永製菓(森永乳業ではない)が製造、販売し続けているアイスの一種である。その名の通り、モナカ型のアイスの中に薄いチョコレートが挿入されている。発売開始の1972年当時は「チョコモナカ」というシンプルな商品名であったが、1996年、ややグレードUPした感のある「チョコモナカジャンボ」に改称され、以降2020年現在までその名称が使われている。

「チョコモナカジャンボ」に改称して具体的に何が変わったか。それまではアイスの中に入っていたチョコはしっとりしたチョコレートソースであったが、それが現在のようなパリッとした板チョコレートに改変された。本体の大きさも、それまでは12ブロックのモナカだったが1996年以降は18ブロックになった。してみると名実共に現在の「チョコモナカジャンボ」が生まれたのは1996年であると言えるかもしれない。



と、これで「チョコモナカジャンボ」の説明は終わりと言えば終わりである。あとは実際に食べてみてください、としか言いようがないというか。

しかし、それではあまりに無愛想なので、話は「なぜ1996年に改変されて生まれた『チョコモナカジャンボ』が2020年現在まで続くロングセラーになったのか」になる。

どういうことなのか? 実のところ、1972年の発売開始以来、森永製菓は「チョコモナカ」を改変し続けてきた。パッケージの細かなリニューアルは言うに及ばず、1980年には商品名を「チョコモナカデラックス」に改称し、1988年にはアイス内側のチョコの仕様を全面的に改めた。1992年にはチョコレートの増量が実施された。

かような1972年以降の試行錯誤の道程を思えば、1996年に「チョコモナカジャンボ」に改称してからこっちは、ともすれば「何もない」と言っていいようなものである。むろんパッケージやキャッチコピーは何度も改められたし、1998年にはモナカとアイスの間にうっすらとチョコがコーティングされるという改良があった(これにより、モナカがアイスの水分を吸ってふにゃふにゃになるのを防いでいるのだとか)。森永製菓が何もしていないというわけではない。しかし大雑把に見れば「チョコモナカジャンボ」という規格自体は1996年に完成したと言っていいと思う。

つまり、現在のところ「チョコモナカジャンボ」は「チョコモナカ」の終着点であり、「チョコモナカ」の極北なのである。

日本アイスクリーム協会のデータによると、日本国内におけるアイスの販売額は1980年代以降、順調に伸びていた。しかしそのピークは1994年で、そこから2003年までは下落の一途。下降線を辿る。2003年以降は一転再び好調となり、アイスクリーム業界は「左団扇ひだりうちわ」とまでは言わないものの、おおむね不況知らずでやってきている。

「チョコモナカジャンボ」が生まれた1996年は、殊更に言うまでもなく、1994年から2003年まで続いた下降線の時期にあたる。アイスクリーム業界の氷河期。そこで生まれた「チョコモナカジャンボ」が現在まで続く看板商品になった。これをどう説明すればいいのだろう?


1996年以前の改変は、そこまで切羽詰まった状況で考えられたものではなかった。おそらくそうなのだと思う。アイスクリーム業界が全体的に好調であれば、一商品のリニューアルが多少ハズレであっても、そこまで劇的な損失に繋がらない。いや、仮に森永製菓のアイス部門が大々的に赤字を出したとしても、昭和末期から平成初期にかけてはバブル景気の時代だったから、他の部門や不動産投資で利益を出せばいい。そういう楽観視だってあり得たろう。

しかし、バブルははじけた。加えて、1994年を境に、アイスクリーム業界全体に不況の波が押し寄せてきた。もはや悠長には構えていられない。ヒット商品はのどから手が出るほど欲しいが、新しくヒット商品を開発するのは容易ではない。研究や開発に時間と経費をかけなくてはならないし、新しく設備投資もしなくてはならないだろう。それでいてヒットする保証はないのだから、リスキーに過ぎる。バブル期ならいざ知らず、バブル崩壊後にはそんな余裕はない。それよりは、今あるラインナップの中からヒット商品を育てたほうが、いくらか経済的エコノミカルである。

こうしたある種の背水の陣から「チョコモナカジャンボ」への改変は行われ、やがてそれが森永製菓の看板商品になるまでに成長したのではないかと思う。まさに窮すれば通ずというか。同商品の売上が伸び始めたのは2001年で、以降は十数年間、着実に伸び続けてきたという。

地道に耐えた結果、「チョコモナカジャンボ」はヒットし、今では森永製菓の看板商品になっている。そこに森永製菓の企業努力があったことは言うまでもない。しかし業界全体が不振の時代にはどんな会社だって企業努力をするし、せざるを得ない。その企業努力が功を奏し、しっかりと実を結ぶかどうかは、はっきり言って「運次第」である。その意味で、「チョコモナカジャンボ」は幸運の女神の微笑みを浴したハッピーな事例と言えるかもしれない。

森永製菓株式会社




 

やわもちアイス
井村屋の、「あずきバー」に続く看板アイス

モナ王
モナカ生地の中にアイス、That's all!