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■ 11月30日から12月30日にかけて、「味噌」をフィーチャーします。







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■ それまでの代々木監督のイメージと、実際の印象の差などは?

M:ありましたね。もちろん、この業界にいれば、どんなペーペーでも代々木さんの名前は知るわけです。AVというものを創り上げた人ですからね。ある先輩からは「代々木さんはヤバいよ」と聞かされていましたし(笑)。僕からすると、その先輩自身がかなりヤバい人だったから、きっと凄く怖いんだろうなと思っていた。でも、実際に会った代々木さんは温和というか、ダンディかつ少し中性的でした。優しい、包み込む雰囲気がある。だから「全然違う!」と思いましたね。面接軍団の佐川銀次さんの紹介で代々木さんに面接して頂いたときのことです。



代々木忠監督

■ 代々木監督の「面接軍団」に入ることに関しては?

M:業界的なことを言いますと、代々木さんの、いわゆる「代々木組」に属する男優というのは、AV男優の中でも別格なんですよ。それで「俺達は凄いんだ」とか「本当のセックスを知ってるんだ」と天狗になってもいけないんですけど、そこに加われることは素直に嬉しいし、名誉に感じるというか。ただ、その面接のときも怖いと思ったことはありました。


■ 温和なはずなのに?

M:温和なんですよ。その調子で「うちでは上手くやろうとか思わなくていいから。そういうのは先輩がやるから」と言われる。ああ、今までの現場と違うなとこっちが思った所で、さらっと「うちではタンポンを食うことが仕事だけど大丈夫?」と訊いてくるんです。面接軍団内で、女性のタンポンを食べるという担当があるときがあるんですね。温和に笑ってそう言われたとき、怖い人だあぁ、と思いました(笑)。


■ 正常な感覚だと思います。

M:タイミング的なことを言うと、キャリア4年目ですから、もう自分の中で「AV男優とはかくあるべし」みたいな、職業意識というか思い込みが出来上がっていた頃です。だから斜に構えていた所は、正直ありました。代々木さんは、目と目で見つめ合う、心が通い合うセックスを「目合い(まぐわい)」と呼びます。だけど何ですか「マグワイ」って。僕達男優はカメラの前でカラミを演じてなんぼでしょ? 心が通い合うとかそんなの重要ですか、と。そういう意識が加入当初はありました。


それが現場で、目の前で奇跡みたいな━━それまでに僕が体験したことがないような━━セックスを次々と見せられると変わってくるわけです。そうして代々木さんの言うこととか、いわゆる「代々木イズム」が理解できてきたのが、面接軍団に入って6年目、僕のキャリアで言うと10年目くらいです。


■ 西暦で言うと2009年頃ですか。失礼ながら、遅くないですか?

M:遅いかも知れませんけど、何も毎日代々木さんと会うわけじゃありませんから。代々木組に参加するのは━━僕が代々木組に呼ばれるのは、ということですけど━━、だいたい年に6~10回程度です。もちろん、銀次さんなどの先輩も代々木イズムについて教えてくれないわけじゃない。だけどボンヤリとしかわからないんですよ。

たとえば、あなたの横に箱があって、中にはサボテンが入っています。あなたは中身を知っている。だけど僕には箱の中が見えないし、中身が何かも知らない。なおかつ僕はサボテンというものを知らないとします。そうしたら、あなたが箱の中身をどれだけ精緻に言語化しても、僕にはクリアに伝わらないと思います。実際に見る、実際に知ることでしかわからない。そういうものなんです。だから6年もかかる。


■ わかりやすい修辞ですねぇ。まぁでもそうですよね。いくら説明されても我々男は「陣痛が実際にどんなものか」とか、たぶん一生わかりませんし。代々木監督の作家性、作品性についてはどのように?

M:代々木さんは、信念を持って真剣にAVを作ってこられた方です。代々木さんの作品を見た女性の中には、代々木さんの作品はエネルギーが凄いから、テンションが上がっているときじゃないと見られない、と言う人もいました。見る人のテンションを選ぶAV作品というのは、やっぱり凄いなと思います。

生き様ですよね。それが作品になる。代々木さんは、たとえば男優が勃起しなくても、それを作品にする。普通、そんなのはAVとしてアウトなんです。最後になっても犯人がわからない推理小説みたいなものですから。だけど代々木さんは、現場での失敗も成功も全てが作品なんだと。言い換えれば、出演する人の人間性を重視されているんです。


■ フィクションの中の真実というか。

M:AVという非日常の中で炙り出されるリアルを代々木さんは撮ってきた。だから僕は、セックスの中でリアルな人間性をさらけ出す面白さ、欲情をさらけ出し合ってセックスをする気持ち良さを、代々木組にいて教わったんだと思います。今となっては確信していますけど、そういうのって、まず自分がさらけ出さないと、相手の女優さんもさらけ出してくれませんからね。それは僕が興奮する対象が、記号的なものから相手の人間性へと変わっていったということでもあります。