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■ 3月31日から4月29日にかけて、時計をフィーチャーいたします。







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■ では、その「今」(2018年)については?

M:代々木さんは80歳で引退すると言われて、今年80歳になられました。僕を含めて、面接軍団のみんなは「辞めてほしくない」と思っているんです。この間会ったときも、お元気そうでしたし。でも、代々木さんの意向を無視するわけにもいきません。いつまでも甘えてはいられない。だから自分なりに、代々木イズムをどう体現して、どう継承して、どう発信するか。そこが今後の課題になります。代々木さんは自分一代で終わらせるとおっしゃるけど、このまま代々木イズムが埋もれていくのはもったいなさ過ぎますから。


■ そこは代々木監督のご意向に沿えませんよと(笑)。逆から言えば、現在のAV業界では代々木イズムは継承されていないんでしょうか?

M:もちろん、「目合い」のような良いセックスを内包したAVを作りたいというメーカーはあります。でも、それを作品化しても十分な売上が見込めないんです。代々木さんの作品だって昔ほどは売れていません。今はユーザー側にも「AVとはかくあるべし」という固定観念が出来上がっているから、ヌキやすさを優先するなどの定型化は避けられませんし、作品内容が似たり寄ったりでメーカー数だけ増えれば、当然利潤は薄くなる(昔は一本で何千万円と利益が出たらしいですけど)。自由に作品を作るようなことは、メーカーを自らされている代々木さんでないとできないのが現状だと思います。

ただ、じゃあ代々木イズムが不要かと言うとそんなわけじゃない。代々木さんが’80年代に始めた『ザ・オナニー』シリーズは、女性が自分を解放して快楽を貪る様をとらえたものですが、今の女性にも通じるんです。自分の性とは何か、自分の欲望とは何かと、自分に向き合って考える女性が最終的に辿り着くのは代々木さんであり代々木イズムなんです。今でも。



『ドキュメント ザ・オナニー PART-1』
© アテナ映像

出演: 斉藤京子

■ そうすると今と当時で、女性が性生活で感じる抑圧は━━

M:変わっていないと思います。自分の性欲に正直になる女性がちょっと増えたら、男は勘違いしたんです。ヤリたがりの、ヤラせてくれる女が増えたと。それは男のための、男が射精して終わりというような、男性上位のセックスにしか帰結しなかった。でも、男を満足させるためだけのセックスじゃなくて、自分の本来の欲望と向き合おうとする女性が増えてきたわけです。『アン・アン』(マガジンハウス)でセックス特集が組まれるくらいですから。

僕は講演をしたりイベントに出演したりもします。それはそういう人達に、僕なりに何か手助けやアドバイスができれば、という思いがあるからです。もちろんAV男優ですから、作品の中で体現するやり方もあるでしょうし、そっちもやっていきたい。でもそれだけだと、見ている人は、ともすれば他人のセックスをなぞるだけになってしまいかねません。実際そうして「AVの真似をすること」がセックスになってしまった歴史がありますから。


■ そうですね。そうなると先程のサボテンの比喩の通り━━

M:そう、実際にセックスしてみた方が早いんです。代々木さんも「千の言葉より一発のセックス」と言います。でも、なかなか難しい所がありますよね。だから僕としては、まず性についてフラットに話し合える場所を作れたら、と思うんですけど。


■ 「話す」というのも、バランスがあるから難しいでしょうね。

M:話が抽象的な、スピリチュアルな方向に行き過ぎると、聖性ばかりが強調されて、生身の生活や日常と乖離してしまいますからね。そのへんのバランス感覚はやはり僕はまだまだで、代々木さんがやっぱり凄いと思います。一方で聖人なんだけど、もう一方では武闘派という感じがありますから(笑)。


■ なるほど(笑)。最後に、話を最初に戻しまして、森林さんと代々木監督との間柄について、お聞かせください。

M:はい。代々木さんと僕は師弟ではないと言いましたけど、僕は代々木さんをメンター(指導者)だと思っています。代々木さんはというと、本当に男優をリスペクトしてくれるし、同志だと思ってくれている。と、僕は感じます。



森林原人

1979年、神奈川県生まれ。
1999年にAV男優としてデビュー。
以降、今日までコンスタントに
AVに出演、パフォーマンスを重ねる。
10代の頃、AV女優の伊藤真紀を
好きだったのは、「ショート・ヘアの
女性が好きだった」からとのこと。
■ 仕事をする上で「行こうぜ、兄弟」というような?

M:代々木さんが軍団の中で、そういう友情というか信頼のようなものを一番寄せているのが平本一穂さんだと思います。代々木さんの中で、平本さんには何か共感する所があるんじゃないかな。隊長の市原克也さんには尊敬があると思います。銀次さんは、代々木イズムを一番体現されている方で、水戸黄門の印籠に近い(笑)。僕の見た所は、ですけど。


■ 森林さんは?

M:自己分析になりますけど、僕は軍団の中で「思考」が強い。つまり、あれこれ考え過ぎてしまうタイプです。代々木組の中でそういうキャラもアリなのかも知れませんけど、やっぱりまだまだですね。思考を落として感性や本性でセックスしていきたい。だからこれからは、代々木イズムを体感してゆく、確認してゆくというステージになるかと思います。ただ、言葉にすると簡単に思われるかもしれませんが、それを実践となると、なかなか難しいです。