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■ 3月31日から4月29日にかけて、時計をフィーチャーいたします。







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日本のギャグまんが
『あさりちゃん』作者、室山まゆみ

室山眞里子

< 2014年06月24日 >


例えるなら、後れ毛をつたう汗のような、身近で疎ましくありつつも愛すべき存在。よく似た兄弟や姉妹などは、そういったものだろう。1978年から、実に36年間続いた児童漫画『あさりちゃん』の作者、室山まゆみは、実際には室山眞弓と2歳違いの実妹、室山眞里子の姉妹ユニットである。彼女たちは、長きにわたり、2人で話を考え、2人で作画をしてきた。

「室山まゆみ」において、眞弓と眞里子は、ある意味では不可分な存在であろう。だが、個人と個人である以上、同一ではないのもまた事実。今回、妹である室山眞里子へのソロ・インタビューを行なった。圧倒的な話数とハイ・クオリティなギャグを、35年以上紡ぎ続けてきた「室山まゆみ」。室山眞里子の独力と特色を、そして彼女の言葉から表出する姉・眞弓と「室山まゆみ」を知るインタビューを、ここに。



■ 本日は宜しくお願いします。まず、『あさりちゃん』が2014年2月に、100巻達成をもって終わりましたが、実際の作業っていつ頃に終わりましたか?

室山眞里子(以下、M): 2月の頭ですね。描きおろしが多いんで、ギリギリまで描いてました。


■ 終わった後というのはいかがでした? 例えば『あしたのジョー』みたいな、燃え尽きた、っていう感じでしたか?

M: 燃え尽きた感じではなかったですね。100巻で終わるっていうのは、前々から決めていたので・・・予定通りという感じで、燃え尽き症候群みたいなのはないですね。


■ その後、イベントなどがあったり、作品ですと、今月末に出る『月刊フラワーズ』(小学館)で、『おまけの柴子』を描かれたりしていますが・・・

(C)小学館・室山まゆみ
M: はい、読み切りを一本だけ描かせてもらったんです。これは柴犬を描きたかったから描いたんです(笑)。今まで普通の雑誌って、あんまり縁がなかったものですから(笑)。若い内は他のも平行してやれてましたけど、ある年齢を境に『あさりちゃん』一本で来ましたから。で、ずーっと金太郎アメ(『あさりちゃん』のこと)描いてるでしょ。だから他の作品を描くっていうのはスゴい新鮮だし、なんか今ちょっと気持ちが新人に戻ってます(笑)。


■ その読み切り作品はギャグまんがですけど、他のジャンルへの挑戦などは考えられませんでしたか? 例えば、90年代には、お2人が学生の頃描かれたやおいまんがを描き直して、期間限定で読者にプレゼントする、などがありましたが。

M: ありましたね。あの時ってまだ体力的に自信があったんで、描けるわけですよ。あの、マンガ描くのって波がありまして、『あさりちゃん』の連載を続けながら、ちょっと遊んでみようか、と。あと、ギャグまんがばっかしやってると、例えばギャグの絵を描かずに普通のマンガって描けるんだろうか、っていうのがあるんですよ。姉とよく言ってるんです、「私たち普通のマンガって描けるのかしら」って。で、描けるかどうか描いてみよう、と(その時は思っていた)。あんま上手くいかなかったですけどね(笑)。


■ (笑)そうだったんですか?

M: どうしても自分の中に『あさりちゃん』っていう抑制がありましてね、あまりエゲツないのは描きたくない、と。やっぱり『あさりちゃん』の作者の、っていうので見る人もいるわけですから・・・まぁ、基本的に応募もそんなに来なかったですし(笑)。


■ お話をお聞きしていると、『あさりちゃん』が先生たちの作家活動の仲核にある感じですね。

M: 私たちは『あさりちゃん』でしかないわけですから。もし違うジャンルのマンガを描くなら、勉強し直して、「私たちこういうマンガを描けますけど、使って頂けませんか」って持ち込みから始めないと、もうムリでしょう。例えば、自分が編集者だったとして、ずーっと学年誌やってきた人間を使いたいとは思わないでしょう。学年誌のマンガって、ひとつ特殊でしょ? 例えば雑誌ごとに毎年読者が替わる訳だし、一般誌とはちょっと違うと思うんですよね。


■ 室山先生ほどのキャリアをお持ちの方でも、そうなんですね。

室山眞里子(漫画家)
1976年、「室山まゆみ」としてデビュー。
以降、児童マンガ、少女マンガの世界で、
第一線で活躍中。
パイナップル・アレルギーがある。
(C)小学館・室山まゆみ
M: 待っていて仕事が来るほど甘い世界ではありませんから、やっぱり就活していかないと(笑)。


■ すると、今後もしばらくは読み切りという形で、マンガにたずさわっていくご予定ですか?

M: いえ、夏休みに入った(2014年)7月29日に『あさりちゃん』の増刊が出ますので、そのネタを考え中です。ここを一番言いたい(笑)。


■ 増刊ですか。

M: そう、古い作品を編集して、あと、新作を60ページほど描きますので、そのネタを今どうしようか、と。60ページと言っても、短篇を何本かという形になるかと思うんですけど、一応100巻の後ということで、新作はあさりが5年生になったお話です。


■ タタミが中1、あさりが小5のお話なんですね。

M: 家庭マンガですから、あんま違いはないですけどね(笑)。ただ、100巻で終わったんだから、新作はそういう形にしよう、と。


(C)小学館・室山まゆみ
■ 『あさりちゃん』では、一貫してあさりは4年生だったわけで、そのずっと止まっていた時計の針を・・・

M: 動かしちゃおう、と(笑)。あれだけ終わった、終わったって言った以上、そこは変えないと詐欺でしょう(笑)。で、それを今どうしようかと、2人で額突き合わせて・・・悩んでる真っ最中でございます(笑)。