■ ご自身でも革下駄を履かれているじゃないですか、今。やはりまずは自分が履いて心地好いモノを目指すという感じですか?
N: パンプスのようなデザインだと、(女性の)スタッフに試してもらって細かく聞きますけど(笑)。基本的には全て必ず履いて何週間も試してから商品化します。靴屋である以上、履き心地が良いっていうのは、最低限の、当たり前のことだと思いますから。
■ スタンダードやファッションについては、どうお考えですか?
N: ファッションって、まずは他人に対して失礼のないように、というところだと思うんです。思いやりと言いますか。そこにエッセンスとして個性が加わっているものだと思います。スタンダードというのは、もう長い歴史の中で研磨されて出来た概念だと思うので、そこには敬意を表すばかりです。
さて、ここでインタビュー中にも出た女性スタッフ、宇都宮さんにも、お話を伺ってみた。忙しい中、彼女はミシンに向かいながら答えてくれた。その背中越しのインタビューである。
■ 失礼します。では、こちらで働かされるようになったきっかけから、お教えください。
宇都宮千鶴(以下、U): 以前OLやっていたんですけど、そこを辞めて。ココともうひとつ、クツづくりの教室に通っている中で、手伝いをしてみないか、と声を掛けて頂いて。
■ その流れで、こちらで働かれるようになったと。ぶっちゃけ、野島さんって、作り手として、どんな方だと思われますか?
N: 俺、席はずした方がいいな(笑)。
U: (笑)私は学校へ行って、作り方を学んで、っていうタイプですけど、野島さんは直接メーカーに入って、技術をいい意味で盗んで、独自に勉強してっていうタイプなので、私とはタイプが違う。私はモノを作っても、独立はしないので。野島さんは「生み出す人」ですね。独立するだけの人だなぁ、とは思います。ここは、あくまで野島孝介が生み出したものを、皆さんに見て頂く場なので、私はそこで手を使って作業をする・・・だから、私は個性を出すことよりは、技術を高めることを追求したい、と思います。
■ 宇都宮さんは作る一翼を担っても、創造性をそこで出すわけではない、と。いや、でもそれはそうですよね。メーカーとクリエイターって、必ずしもイコールではないわけで。いや、どうも、お忙しい中、ありがとうございました。
N&U: ありがとうございました。
インタビューと文: 三坂陽平