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■ 3月31日から4月29日にかけて、時計をフィーチャーいたします。







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■ 手作り感ありますよね(笑)。大量生産のビールには無いモノを、っていうのが、お話を伺うと、色濃く伝わって来ます。

B: やっぱり、私達(ブライアンさんとさゆりさんはご夫婦)はアメリカのエール文化に慣れ親しんでいたので、エール・ビールを造り広めたいと思って、(クラフト・ビールを)始めたっていうのがありますから。2人とももともとビールが大好きで、地ビール解禁(1994年)を機にいろいろな日本の地ビールを飲みましたけど、ほとんどドイツ系のビールでしたからね。


(ポパイの)青木さんも言ってた、それ(笑)。でも独学でビール醸造を始めた、っていうのではないんですよね。

B: はい。本格的にビジネスに参入するため、2人とも勤めていた会社を辞めて渡米して、ブライアンはビール醸造の専門学校で勉強しました。卒業して現地の醸造所で実習を積んだ後、たまたま出会った設備会社の紹介で醸造の指導者として、沼津に来ることになったんです。


■ 私みたいな怠け者からすると、その行動力がすごいな、と思います(笑)。そうすると静岡県沼津市には、こう言うとぶっきらぼうな感じですけど、別に縁もゆかりもなかった、という・・・

B: なかったですけど(笑)、でも振り返ると、この地で13年やってきて良かったことって結構ありますよ。まずは、水が良いということ。富士山の湧水が水源となっていて、水道水がクリアな軟水でとても美味しいです。そして、果物や農作物など、大地の恵みが豊富だということ。それらは(ベアードビールの)ビールにも活きてきています。


■ じゃあ、悪い点も訊かないわけにはいかない(笑)。

B: (笑)1つだけ挙げるなら、保守的な町なので、ベアードビールが受け入れられるまで10年以上かかったということですね。2000年に開業にこぎつけたんですけど、ウチはその当初から禁煙で、しかもぬるくて炭酸も弱いエール・ビールを造ってるもんですから、この漁師町である沼津には全く受け入れられませんでしたね(笑)(※)。

(※)・・・ベアードさんは醸造だけでなく、ビール・パブも経営している。



■ ああ、確かに日本の肉体労働者って、喫煙者多いですしね。

B: なので、ビールを生産するにはとても良い町ですが、販売するには難しい町だったかな、と。地理的には日本のほぼ真ん中に位置しているので、東京・大阪といった商業圏への流通アクセスが良いというのは利点ですけどね。


■ それは国内では大きいと思いますよ。(前述の)青木さんがおっしゃったのには、「ビール職人には、ビールをデザインするセンスが要る」と。その辺りの研鑽については、どうですか?

B: ビールだけでなく、美味しいものを食べたり他の素晴らしいウイスキーやワイン、日本酒などを幅広く飲んだりして、多様な味覚を感じ取ることも大事ですよね。フルーツ・エールを造る時には、美味しいワイン造りの製法から多くのヒントを得ましたし。




ベアード・ブライアン&さゆりご夫妻
■ ベアードビールさんは一貫して職人的なビールを造り続けて、ここまで来られたわけですけど・・・

B: そう、創業当初から「地ビール」とは違う、「職人のビール」を意識して、「クラフト・ビール」と言い続け、ホーム・ブルーイングのような極小規模で始めました。それでもここまで何とか生き延びてこられたのは、品質第一で妥協せず自分たちが美味しいと思うものを造り続け、そしてそれを見守ってくれたお客様のお蔭だと思っています。


インタビューと文: 三坂陽平