■ 靴職人の中には何でも1人でやりたがる方もいらっしゃいますけど、こちらでは分業制を敷いていますよね。
S: 1人でやると時間も掛かるし、数こなせないからウデも上がらないし・・・やっぱ数を作らないとモノは上手く出来ない。そういうとこで必然的に分業制になっていった感じですね。最初は俺一人だったけど。
■ それでも、大量生産に向かうっていうのにはならないんですね。
S: 靴っていうモノだと、やっぱり履き心地だとかいろんなことが関係してくるので、そこで直接お客さんに接していると、そういう意見とかも聞けるじゃないですか。それは大量生産(の体制)だとなかなか難しいだろうし。せっかく履くんだったら、履いている人の気持ちが上がるような・・・格好良く見せたいだとかさ、っていうのも自分たちの中に自然と入って来て、それが次に作る靴に反映されるとかがありますからね。
■ ビスポークならではのお客さんとの緊密な関係と言いますか、その中で常に変化を繰り返している、と。そこでお聞きしたいんですけど、「そのみつ」、まぁ、園田さん個人でもいいんですけど、の近未来の展望などをお聞かせ下さい。
S: ・・・楽にやりたい(笑)。
■ (笑)先ほどのお話にもありましたように、「そのみつ」ではお金を第一義にしてきたわけではない、と。今後もそれは・・・
S: いや、そんなことはないです。まぁビジネスとして考えた時に・・・取り敢えず公務員には勝たなきゃな、って。やることに対してね。もちろん前から目指しはしてるけど、ビジネスとして考えた時に・・・じゃあビジネスって何かって言ったら、当然お金儲けとかになるんだけど、その根本は何かって言ったら、そこで働く人間、それに接する人間たちがどうちゃんと生きて行けるか、になるわけです。
■ それがないと靴だって何だって作って行けないですからね。かすみを食べるわけじゃないんだから。
S: そうそう。それに関わってる人達がどうでもいいっていう状態ではダメなんです。まず最低限の基盤を固める、そのためにはどうしたらいいのかとか・・・それが俺の考えるビジネスなんですけどね。
■ 「そのみつ」で靴作りに関わる人の暮らしを、と・・・
S: 自分もそうですけど、そこをちゃんとするってなった時に、公務員には勝ちたい(笑)。公務員の、今年の夏のボーナス、〇〇円~♪とか云われると・・・勝ちたい(笑)。「おいおい、そんな取ってんのかよ」って(笑)。大企業とかは、そりゃ仕方ないですよ。従業員も大量にいて、動かす金額が違うわけだから。
■ まぁ、そうですよね。でもそこらの地方公務員には負けたくない?
S: ちょっとせめてねぇ・・・やっぱりこれだけやっているんだし。意外と・・・こういう靴作りって、すてきな職業なんですよ?
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「そのみつ」代表 園田元さん
ホームページ: そのみつ
所在地: 〒110-0001 東京都台東区谷中2-18-6
電話: 03-6904-1312
定休日: 水曜日・木曜日
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■ はい(笑)。
S: 意外とね? でも伴っているものというところでは全然そこまで行ってない。業界全体に元気がないとか色々あるけど、そういうことのせいにしちゃいけないから。それがある種、目標です。地方公務員・・・いや、国家公務員に勝ちたい、と(笑)。公務員が楽してるとは言わないけど。しんどいのは何処だってそうでしょうし。
■ なるほど(笑)、本日は貴重なお話をありがとうございます。
S: ありがとうございます。
インタビューと文: 三坂陽平