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日本のワイン
『ワイングロッサリー』代表取締役

吉田まさきこ

< 2016年12月31日 >

京都は八坂神社から四条通をいくばくか西進すると、堀川通、大宮通がある。その間隙に店を構えているのが、1877年創業のワイン・ショップ『ワイングロッサリー』だ。創業当時は食料品店だったが、40年前にワイン専門店に転身。ワインとの付き合いは長く、また取り扱うワインの質へのこだわりの高さにも定評があるワイン・ショップである。

「日本のワイン」というテーマに、正直ピンとこない人も多いだろう。それは「アメリカの寿司」あるいは「フランスの草履」といった感じで、どこか舶来品の模倣に過ぎない観がどうしても漂うからだ。しかし日本は、コンビニやオムレツの例をあげるまでもなく、舶来品を発展させ、独自の文化を築いてきた国でもある。そこで、日本のワインも取り扱っている『ワイングロッサリー』の吉田まさきこ社長に、日本のワインの「今」を訊ねにきた次第だ。




■ お店をたずねるのは初めてなんですが、『ワイングロッサリー』さんでは、だいたい何本くらいのワインを常時取り扱われているんですか?

吉田まさきこ(以下、Y): 扱っている数で言いますと、約4000種類になります。もちろん、それは日本のワインだけではなくて、フランスやイタリアなど、本場ヨーロッパの品を筆頭に、北米や南米、オーストラリアのワインもありますし、シャンパーニュを含むスパークリング・ワインもあります。



■ お店の中を一瞥するだけでも、私なんか無作法な人間ですから、歩いていてぶつかったりするんじゃないかとヒヤヒヤします(笑)。こちらのワインの基準と言いますか、良いワインを見定められている工夫などを教えて下さい。

Y: それは本当に勉強しかありません。このワインが作られた地域の天気や土壌がどんなだとか調査したり、生産者に来て頂いてセミナーを開いて頂いたり、テイスティング(試飲)にテイスティングを重ねて、この値段でこの味は素晴らしいとか、この味は良いけど値段に見合わないとか、日々、私を含めたスタッフ全員で勉強を重ねています。



■ 終わりがないというか、大変そうですね。

Y: ソムリエの資格を取得することが、うちでのスタート・ラインに立つということなんです。お客さまから「このワインは何ですか?」と訊かれたら、スタッフ全員が答えられないと、接客にならないですから。だからうちに入社しても、接客に出られるまで時間が掛かりますね。今はスタッフが18人くらいいますけど、ほとんどが資格を持っていますし、持っていないスタッフには、受かるまで試験を受け続けてもらいます。

スタッフとして活躍してくれた後、独立してワイン・バーを開いたり、飲食店に転職したりするスタッフもいます。そうすると、うちの卸の面でのお客さまになるわけですから、ありがたいですね(笑)。また、長野に帰省して、ワインの生産者になった元スタッフが1人いますけど、そういうふうにこの会社から枝葉が広がっていく感覚は面白いなと思います。うちで働いたことが、彼らの糧や誇りになっているというのは嬉しいですし。もちろん、残ってくれているスタッフを一番に大事にしたいと思っていますけど(笑)。


■ 今ってワインを買おうと思ったら、スーパーやコンビニでも買えますよね。こちらの『ワイングロッサリー』さんでワインを買う意義について、お聞かせ下さい。

Y: うちでワインを買うと「ハズレが少ない」とは、お客さまによく言って頂けることです。海外のワインも日本のワインも、そのワインが自分の好みにあうかどうか、飲んでみるまでわからないところが多少あります。でも、出来れば自分の好みにあった、美味しいワインを飲みたいですよね。だからこそ信頼できるお店で買うことが大事だと思います。お店のフィルターを通った品が並んでいるわけですから、美味しいワインに出会える確率は高くなります。


吉田まさきこ

1975年、京都府生まれ。
ワイン・ショップ『ワイングロッサリー』
社長の娘として生まれ、
1998年、『ワイングロッサリー』へ入社。
2013年、家業を継ぐ形で、
『ワイングロッサリー』の3代目
代表取締役に着任。
ワイン・ショップの他に、
ワイン・バーの経営なども手掛ける。
いつもお客さまには「まずは基準となる1本を見つけて下さい」とお願いしています。具体的なワインの名前をひとつ挙げて頂き、それがご自分にとって、ぴったりの好みだったのか、甘すぎたのか、酸っぱすぎたのか、渋すぎたのか、香りは良くても食事と合わなかった、などを聞かせて頂き、それを参考にしてお薦めをさせて頂く。この方法が、お好みのワインをご提案できる確度が一番高いんです。お客さまに「この前買ったワイン、美味しかった!」とおっしゃって言って頂けるのは、お店として何よりの喜びですね。


■ 自分にとってベターなワインに出会うために、ということですね。さて、眼目である「日本のワイン」についてなんですが、御社と日本のワインとの関係、その歴史からお聞かせ頂けますか?