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■ 3月31日から4月29日にかけて、時計をフィーチャーいたします。







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「内的要因としては、そりゃ作り手の試行錯誤の賜物っていうのがあります。マンガの読者層なんて最初はほとんど子供だけだったのに、それを大人にまで広げていったっていう。それに、技術面でも色々な発展がありますし。あと、外的要因としては日本のサイズにマッチしていたっていうのがあります」


■サイズですか?

「そう。日本の社会は一時は1億総中流なんて呼ばれた時代もありましたけど、その中流層にターゲットをしぼれば、国内読者数だけで結構な数になるわけですよ。十分産業として成立する」


■マーケット的に、っていうことですね。

「海外だとその階層がいくつもあって、ターゲットがしぼりづらいんですよ。無難な子供向けのものか、限られた大人のマニア向けに偏った内容になりがちです。そうすると、ジャンルとしての細分化とか発展は、そうそう出来ませんから。でも、日本も別に最初からそんな計算があってマンガを成長させたわけじゃないんですよね」


■ただ、そうだった、っていう。

「そうですね。むしろ、お上とか公共性といったものと距離があったからこそ成長できたっていうところもあると思いますよ。娯楽として放置されて来たというか。海外だと国が規制する場合もありますけど。勿論、表現規制とかあったことはあったけど、それも乗り越えて・・・もうマンガで表現してないジャンルって、日本では無いんじゃないかなって言うくらいになっていますからね」


■色々ありますからね。元々は男の子向けのものだったはずが、今やボーダーレスで。海外だとそれはあり得ないと?

「海外だと先ず大人向けと子供向けがハッキリしている。フランスだと、大人向けのマンガであるバンド・デシネは芸術性が高いとか。アメリカでも、大人向け商品はグラフィック・ノベルって云って、子供向けのいわゆるアメコミとは区別する。だけど、日本だとそうはならなかった」


■確かに。今や大人がマンガを読むのなんて、フツーの景色になって来た。色々な人が楽しめるマンガがあるっていうのが、日本のマンガの強みなんですね。

「1959年に『少年サンデー』と『少年マガジン』が創刊されたんですが、これがマンガ週刊誌の始まりです。週刊誌ってボリュームも相当なものですし、回転も速いじゃないですか。それに日本って(面積が)狭いですから、大抵の地域で同じものがほぼ同時に共有出来ます。中国やアメリカなんかだと、それは不可能ですよね」


■まあ、広いですから、店着日が同一っていうのは無理でしょうね。

「ボリュームがあって回転も速い、しかもそれを日本各地でほぼタイム・ラグなしに共有出来たっていうのは、大きかったと思います。そうして、1960年代後半の『あしたのジョー』とか辺りから、大人がマンガを卒業しなくなってきた。読者層の拡大ですね。そしてこれが細分化につながっていくわけです」


■マンガが日本人全体に浸み込んできた・・・ということですかね。