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■ 10月31日から11月29日にかけて、水をフィーチャーします







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編集余談

過日、女優の沢尻エリカさんが、違法薬物(合成麻薬)所持の容疑で逮捕されました。私はこの件自体についてはよく知りません。なにしろ、沢尻さんとは一面識もないので、彼女について何か有用な知見があるでもなし。この一報が流れたときも、慨嘆も憤怒もなかったです。はあ、そうなんだ、くらい。

気になったのは、この逮捕劇に際し、タレントのラサール石井さんが、以下のようにツイッターでつぶやいたことです。

「まただよ。政府が問題を起こし、マスコミがネタにし始めると芸能人が逮捕される。これもう冗談じゃなく、次期逮捕予定者リストがあって、誰かがゴーサイン出してるでしょ」(2019年11月16日)

このつぶやきに対し、賛同する人もいれば、単なる陰謀論だと一笑に付した人もいて、喧々囂々、一時は「炎上」したみたいです。私は芸能界とも政界とも関わりがないので、このつぶやきの真否や実相は知りません。ただ、知らないなりに一つ気になることがあります。

違法薬物に手を出している芸能人って、警察や検察が予定調和で「リスト」を作れるほど、うじゃうじゃいるの?

ということです。ラサール石井さんのつぶやきは、そういった前提があってのものではないかと。彼は早稲田大学に在籍していた1970年代から芸能活動に従事してきた、芸能界のベテランです。当然、芸能事情に関して、私のような門外漢や、新人タレントとは比べ物にならないほどの情報量と見識を持っているはずです。

その彼が、上記のようにつぶやいた。そこが私には引っかかるのです。

沢尻さんが違法薬物所持の容疑で逮捕された。仮に彼がこの一報を受け、「まただよ。また芸能界からクスリの常習者が出た。これもう冗談じゃなく、芸能界全体に薬物汚染が蔓延してるでしょ」とツイートしたなら話は分かります。もちろん、やはり「炎上」は避けられないかもしれません。しかし、半世紀近く所属してきた業界が大変なことになっている、その危機感があるのだろう、と解釈する余地は残されています。

しかし、そうではなかった。彼は「沢尻エリカが違法薬物所持の容疑で逮捕された」ことよりも、「このタイミングで同業者が違法薬物所持の容疑で逮捕された」ことを問題にしたのです。

つまり、沢尻さんが逮捕されたこと自体は、さほど問題ではない。少なくとも彼のつぶやきからはそう伺えます。

あくまでも私見ですが、同業者が違法薬物所持の容疑で相次いで逮捕された場合、私ならまず「自分が属している業界」を心配します。たとえば、私が町の商店街の一角で定食屋を営んでいたとして、近隣の同業者が相次いで麻薬所持で逮捕されたとなれば、まぁ心穏やかではいられないと思います。あの立ち食いそば屋の兄ちゃんも、あの喫茶店の奥さんも、私と同じように普通に働いていたのに、麻薬所持で逮捕されるなんて。反社会的な暗い勢力が、自分のすぐ近くに迫っているのか、と怖くなるでしょう。気に病んで転職する人だって、いるかもしれません。

ところが、ラサール石井さんはその心配をしない。

あるいは私がナイーブに過ぎるのかもしれません。芸能界というのは、反社会勢力が跋扈しているのが当たり前、クスリや刺客が怖くて芸能人が務まるか、という業界なのかもしれない。私が小市民なだけかもしれません。

安倍政権を擁護している、というわけではありません。別に、どこかの作家や元「おバカタレント」や好感度ナンバーワン芸人のように、花見に招待されたこともないですし、読売新聞グループの白石前会長みたいに、スイス大使に再就職させてもらったわけでもない。だから擁護する義理がない。なぜ安倍首相は公職選挙法違反で逮捕されないのか、とも思います。

しかし、それとは別に、違法薬物所持(あるいは使用)の容疑で同業者が相次いで逮捕されているにもかかわらず、芸能界のベテランが「芸能界の心配をしていないように見える」ところにも、私は得体の知れない闇を感じてしまうのです。もちろん、上述のように、私は芸能にも政治にも明るくない門外漢ですから、杞憂かも知れませんけれども。


(三坂陽平)