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■ 8月31日から9月29日にかけて、「ヨーグルト」をフィーチャーします。







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編集余談

8月29日月曜日、晴れ。

日中は特に予定もないので、家でこつこつとパソコン作業をしたり、片づけや洗濯をしたりして過ごす。

夕刻、アクリエひめじ(兵庫県姫路市の多目的ホール)で催されるイベントを観賞しに、JRの新快速に乗って兵庫県の姫路まで行く。

そのイベントの題は「ひめフェス2022」で、まぁ森口博子とビヨーンズのジョイント・コンサートである。ただしちょっと変わっているのが、伴奏を務めるのがパシフィックフィルハーモニア東京というオーケストラ(管弦楽団)であること。指揮者は藤原いくろう、主催は姫路市文化国際交流財団。

個人的には、森口博子もビヨーンズもパシフィックフィルハーモニア東京も、コンサートに伺ったことはない。全くの初心者。さて、どうなるか。

ところで、私が暮らす大阪から姫路だと、土地勘のない方は「まぁ隣の県なんだからすぐそこって感じだろう」と思われるかも知れない。あにはからんや。姫路という町は、兵庫県内とはいえ神戸や明石よりも西、つまり岡山県寄りにある。そうなると、大阪北部や京都に暮らす人間にとっては、ともすれば「新幹線で行く町」になってしまうのである。要するに、結構遠い。

新大阪ないしは大阪で新幹線に乗り換えて、姫路まで行くと、片道の交通費は合計4千円近くになってしまう。ところが、大阪で新快速に乗り換えて行くと1980円で済む。問答無用。エコプラン的方針により新快速の一択である。もちろん、かかる時間は異なるわけだが、新幹線を使っても10分や20分で着くということもない。

そういうわけで、大阪駅で新快速に乗り換え、1時間以上揺られ、姫路へと向かう。ところがこの電車、めっぽう寒い。電車内のクーラーが効き過ぎなのである。炎天下をうろつき回った中高年の男の営業マンが、オフィスに帰社した途端に冷房をガンガンに効かせ、事務職の女から恨まれるという光景がたまにあるが、まさにあのエアー・コンディションである。寒い。

半袖姿で座っている私は、とりあえずリュックを抱える形で身体の前に置き、なんとか寒さを凌ごうと考えた。私の正面では、やはり寒いのであろう、多分30代と見られる女姓が鞄から薄手のカーディガンを取り出し、肩にかける。その横では制服姿の女子校生が、ムダ毛処理の跡が生々しい脚を組み、一心不乱にスマホをいじっている。

スマホも携帯音楽プレイヤーも持たない私は、ただぼうっとして景色を見たり瞑目したりして時を過ごす。若い時分には、そういうのが退屈で仕方なかったものだが、ここ何年かは、こういう過ごし方が楽でいいと思うようになった。人間というのは変わるものですね。が、それにしても寒い。ふと見上げると、吊り革のあたりで蜘蛛の巣が揺れている。この寒風がダイレクトに吹きつける車両では、吊り革を握ろうという人もそうそういないのであろう。

姫路に到着。改札を抜けて駅を出ると、目の前には悠然とした姫路城。しかし城郭観光をしている余裕はない。アクリエひめじを探さないと。開演予定時刻まで30分を切っている。駅員に訊いたり、ビヨーンズのコンサートTシャツ(だと思う)を着ている人の後をついていったりしているうちに、さいわい、開演までに会場に着いた。

開幕。パシフィックフィルハーモニア東京が序曲を演奏する中、ビヨーンズの面々がオーケストラの横に立ち、それぞれのポジション(セカンド・バイオリンとかチェロとか)を紹介していく。華やかでありつつ、どこかコミカルな。森口博子はいない。どうやらビヨーンズが先発の様子。

秀逸だったのがビヨーンズの自己紹介である。メンバーの高瀬くるみ(だったと思う)は「私達ビヨーンズはハロー!プロジェクトのグループで、モーニング娘。'22やアンジュルムと同じ事務所に所属しているアイドルです」と説明した。分かりやすい。しかも滑舌が良く、声も通っている。彼女が司会進行に長けているのか、ビヨーンズ全体がこうなのかは判じないが、これ以上はないという明快な自己紹介だったと思う。

ビヨーンズがオーケストラを伴奏にしたコンサートを開くのは初めてという。でも彼女達のパフォーマンスは━━ビヨーンズも楽団もお互い手探りな感じは多少あったけれど━━、総じて良かったと思う。音大生のメンバー小林萌花がピアノを担当し、オーケストラと奏でた(他のビヨーンズの面々は一旦ソデに引いていた)ベートーベンの「月光」も印象的だったし、往年のXのパロディなのであろう「アツイ!」は、運動会の徒競走で用いられそうな音楽に化けていた。数曲でビヨーンズのターンは終了し、森口博子の番まで暫しの小休憩。



「アツイ!」


暗転。森口博子のターンとなる。と、私は3階席で観ていたのだが、なにやら背後のドア付近に大人数の気配がする。森口ファンの団体さんが遅れて来たのかなと思い、ちらりと振り返ると、ビヨーンズの面々が係員に誘導されて席に着いていた。確かに3階席の後方2~3列は空いていたのだが、まさかそこに今の今までステージでパフォームしていた人達が来るとは思わなかった。予想外。ちょっと緊張。

森口のパフォーマンスは、おおむね好調だった。声も通っていたし、彼女の唄を「良い唄」と位置付ける人がいても当然の出来だったと思う。ただ、森口の唄はともかく、照明が私にはきつかった。3階席の方に向けられた青白いライトがずっとまぶしくて、ステージを満足に見ていられない。おまけに20時を過ぎて空腹も空腹。ムリだ、帰ろう。やむなく3曲目の途中で退席した。

帰り道、姫路駅構内の「一粒」という、注文を受けてから握るおにぎり屋で、ツナマヨと海老マヨをテイクアウト。400円とちょっと。温かいふかふかのおにぎりを2つ頬張り、持参した麦茶を飲む。新快速電車で帰路についた。


(三坂陽平)