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■ 2021年4月に発令された緊急事態宣言と、それに伴う取材活動の大規模な制限を受け、当面の運営を休止。再開時期は(宣言解除の時期が未定である以上)未定。







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編集余談

2020年4月、日本国政府は緊急事態宣言を発令した。それから1年経った現在、世は依然として「コロナ禍」である。感染拡大の様子や、政府や自治体のありようを見ると、情況はむしろ1年前より悪化している。そう言っていいと思う。そして、好転する要素は取り敢えず見当たらない。だから、ここでは改めて「新型コロナウイルスとは何か」を検討することにする。私達にとって新型コロナウイルスとは何なのかを。

「新型」とある通り、新型コロナウイルスとはコロナウイルスの新型である。コロナウイルスは風邪(流行性感冒)の原因となるウイルスで、風邪の10~35%はコロナウイルスが原因だという。

ヒトに風邪を発生させるタイプのコロナウイルスは、これまでに6種類確認されていた。そのうち、感染者に重度の肺炎を引き起こし、重症化させる凶悪なタイプが2種類。これらはSARSウイルス、MERSウイルスと呼ばれる。今回の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は、7種類目の「新型」コロナウイルスであり、凶悪なタイプの3種類目に位置する。SARS-CoV-2という表記を見る限り、SARSウイルスの類似形なのだろうと推察する。

そもそもウイルスとは何か? 一般的には「他の生物の細胞にとりつき、宿主の代謝機能を活用して自己複製をする極微細な物質の総称」である。生物学的には、ウイルスは細胞を持っていないので生物の定義に合致しないらしい。

2020年、大阪府知事が「新型コロナウイルス予防にはイソジンが効く」という旨のデマを公言した。イソジンは喉の消毒に多少効果はあるかも知れないが、ヒトの細胞にとりついたウイルスを除去する効果まではない。府知事がいかなる根拠から一私企業に資するようなデマを流したのか、依然として説明はなく、デマを流した責任をとり辞任したという話もない。

今回の新型コロナウイルスには、従来のウイルス性の感染症(インフルエンザなど)と異なる特徴がいくつかある。夏になっても流行が止まらない。重症化率は総じて高くないが、基礎疾患(成人病など)を持つ人や高齢者の死亡率は極めて高い。そして何より、無症状の人からの感染が見られる。このステルス性こそ、新型コロナウイルスの一番厄介なポイントであろう。

たとえばインフルエンザであれば、感染者が他人に感染させる可能性のピークは、症状が重症化したときである。だから症状が出た人を、自宅で待機させるなどして社会的に隔離すれば、感染拡大はある程度防げる。しかし新型コロナウイルスの場合、無症状の人も他人に感染させる可能性があるという。だから当局は手を焼くのである。

新型コロナウイルスに感染しているか否かを調査する手段として、PCR検査がポピュラーになった。しかしPCRは本来、DNAを増幅するもので、新型コロナウイルスはRNAウイルスである。よって、RNAをDNAに変換して検査することになるのだが、その過程では、いわゆる「偽陽性」や「偽陰性」などのエラーも出てしまう。

偽陽性とは「実際はウイルスにかかっていないのに、かかっていると判断されること」である。偽陽性が生じる可能性は、検査機関によってまちまちだが、だいたい1パーセント未満という所らしい。対する偽陰性は「実際はウイルスにかかっていても、かかっていないと判断されること」である。この偽陰性が生じる可能性は約30パーセント。つまり、100人の感染者を検査しても、約30人は「かかっていない」と誤断される可能性があるということである。これでは、仮に全家庭にPCR検査キットが隈なく配布され、全国民が検査を受けたとしても、感染拡大は止まらないだろう。

検査を受ける時点で新型コロナウイルスに感染しているか否か。これを調べる方法としては、PCR検査のほかに「抗原検査」というのもあるが、こちらもやはり偽陽性や偽陰性は出てしまうらしい。

新型コロナウイルス感染を予防するためには、手洗いやうがいを徹底した上で「喋るな、群れるな、黙れ、散れ」を遵守するしかない。一部では「マスク会食」が推奨されるが、マスクの感染予防効果は限定的なので、あまり意味はない。推奨するなら「会食しない」であろう。レッツ『孤独のグルメ』。でも、これを言うと、まず政治家が難色を示すだろうな。政治家になる人というのは基本、群れたがりで喋りたがりだから。その点では、政治家も学生もサラリーマンも「大阪のオバチャン」も、本質は変わらない。

私達にとって新型コロナウイルスとは何か? それは「一見フツウに見える人でも、実の所はえたいが知れないぜ」と私達に警告するものであろう。最大の特徴がステルス性であるとは、そういうことである。いささか比喩で語り過ぎだろうか? でも実際、今回のコロナ禍で「信用していたあの人があんなことを言う(する)なんて」と驚いたり傷心したりした人は、結構いるんじゃないかと思う。新型コロナウイルスとは、40年前に発見されたエイズ同様、人間関係のあり方の根本を問うものかも知れないのである。


(三坂陽平)