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■ 8月31日から9月29日にかけて、ビールをフィーチャーします







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編集余談

全国区のテレビや新聞、雑誌などで嫌韓キャンペーンがかまびすしい。たとえば昼のワイドショー『ひるおび!』(TBS)などは8月の最終週、ひたすら韓国の話題を、番組の持ち時間のほとんどを割き、優先的に扱った。その週にはご存じのように、九州で豪雨による広域災害があった。それにもかかわらず、同胞(日本人)の危機や災難はそっちのけで、ひたすら韓国政府の疑惑を取り上げていた(なぜ自国の政府の汚職や疑惑はスルーするのだろう)。

この「常軌を逸している」とも言える嫌韓キャンペーンに、心が痛む。私は韓国に行ったことがない。でもマンガ研究員のユー・スギョンさんには、何年か前にインタビューにご協力頂いたご恩がある。彼女は韓国出身である。だから今回の全国的な嫌韓キャンペーンには、胸が痛む。彼女にはさぞご心痛のことではないか、と。

というわけで、以下、ユーさんへの私信という形をとり、文章をしたためる。彼女がこの文章を読むかはわからない。ただでさえお仕事でご多忙であろう。それに、彼女にとって有益な情報が常に掲載されているスペースというのでもない。ただ、プライベートでのお付き合いは一切なく、あくまで仕事を通じてお世話になった方なので、そうなるとやはり、こういう形がベストかなと愚考する次第。


こんにちは。ご機嫌いかがでしょうか。従前の取材の折にはたいへんお世話になりました。

昨今、日本国内においては、テレビ番組、大手の全国紙、週刊誌などを通じ、ある種の「嫌韓キャンペーン」が瀰漫しています。韓国をあの手この手で誹謗する言説が、日常的に蔓延しています。これら一連のキャンペーンにお心を害されていないか、切に案じております。小生がユー様のお立場でしたら、おそらく(多分に)しんどく感じるだろうなと思いますので。

小生は日本国民ですが、正直に申し上げて、この嫌韓キャンペーンのメリットがよくわかりません。韓国政府の醜聞を(自国の大規模災害を放置してまで)大々的に報じ、それに便乗して韓国をディスる。それで誰に何の利益があるのか、皆目見当がつかないのです。市場経済は冷え込むし、国際政治は泥沼化する一方でしょう。少なくとも、日本の一般市民に益するところはこれと言ってないと思われます。

確かに、一部の国家主義者や差別主義者には短期的に資するところはあるかも知れません。一時の高揚感が得られるとかね。しかし、それにしたって実利性がない。

過日、小学館の『週刊ポスト』が「韓国なんて要らない」という見出しを掲げました。炎上商法なのかは藪の中ですし、あの見出しを採用してどれほどの売上増があったのかもわかりません。

小学館と言えば、あの『ドラえもん』を擁してきた出版社です。日本のマンガを読む者にとって、ある意味で、避けては通れない会社のひとつと言っていいでしょう。その小学館が、道徳や良識を排し、あのようなヘイト的言説を組織的に容認した。そのことには、おそらく小生以上の失望と落胆を感じられたのではないかと思います。

一日本人として、ほんとうに申し訳なく、また恥ずかしく思います。

小生が初めて韓国という国を意識したのは、2002年だったと思います。と言っても、日韓W杯とかサッカーにはまるで興味がなかったです(今もないですが)。小生は日本のポップスが好きだったのですが、そこにBoAさんという、若い韓国人歌手が現れたのです。へぇ、韓国の人なんだ、俺より若いのに凄えなぁ、と思いました。

そのときには、今ほど大々的な嫌韓キャンペーンというのは見られなかったと思います。BoAさんに対する国内の反応も、総じて「韓国の若い歌手ががんばってんだな、ふぅん」くらいの感じだったと記憶しています。

小生の韓国観は、この感じに似ています。別に愛着もないけど、嫌うようなものでもない。だって、韓国に行ったこともないし、よく知らないですからね。そりゃ、韓国政府に全く問題がないとは言いませんよ。でも、日本政府の方がよっぽど問題なわけですから、よそのこと言えた義理じゃないよな、と思っています。

たぶん、大多数の日本人は、韓国を嫌う実際的な理由なんてないと思います。たとえば、韓国人投資家に騙されて億単位の損を出してしまったとか、実の姉が韓国人のホストにたらしこまれて痴話喧嘩の末に自殺したとかなら、その人が韓国を嫌いになるのもわからなくはない。でも、大多数の日本人にはそんな経験がないはずです。それなのになぜ「嫌韓」的な空気が瀰漫するのか、よくわからないところがあります。

末尾ながら、ユー様には今でも深く感謝しています。また、ユー様のご研究やお仕事には、マンガで育った1人として、敬服するばかりです。そして、そのユー様のお心を日本のマス・メディアが害し続けている場合には、同じ日本人としてたいへん申し訳なく思います。ほんとうにすみません。


(三坂陽平)