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■ 7月31日から8月30日にかけて、神社をフィーチャーします







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編集余談

TOKIOのヴォーカル、長瀬智也(1978-)が自身の所属しているジャニーズ事務所を来春にも退所するという。退所後は芸能人ではなく裏方として生きていく意向であるというが、来春以降の予定は、現在何一つわからない。ご賢察の通り、この話は「芸能ニュース」である(あんまり速報性はないけれども)。

今時、芸能ニュースってどれほどの価値があるんだろう? テレビに映る自称「芸能レポーター」は皆さん若くてもアラフィフで、芸能ニュースを配給したり解説したりする業種自体、全体的に高齢化が著しい。それがどういうことかと言うと、「若い人は芸能ニュースに価値を置いていない」かも知れないんですね。そうでないなら、芸能レポーターの中にもう少し若い人が散見されてもいいはずで、ともすれば昨今の芸能ニュースは(主に)高齢者の耳目しか集めていないのかも知れない。

ちょっと話は脇に逸れるが、広告媒体としてのテレビの価値は、ここ20年で劇的に下がった。まず広告枠を買い取るスポンサーが以前ほどいない。勢い、広告枠は総じて安くなり、それに比例して、テレビのCMは加速的に劣化し、つまらなくなる。健康食品、ロード・サービス、中古品買い取り、便利屋、その他諸々━━以前なら、深夜番組かケーブル・テレビでしか見かけなかった、チープで見るべきところもないくせにやたらと長いCMが、今では全国放送のCMとして、朝昼問わず、大々的に流されている。

私はテレビを観るという習慣を排して久しいが、テレビを毎日観続けている人って、ああいうつまらないくせにやたら長いCMを延々と見せられて、辟易しないのだろうか? 少し気になる。もちろん、CMは飛ばすから眼中にないという録画組の視聴者がいることは承知しているが、みんながみんな律儀に録画して観るでもなかろうに、とも思う。まぁ余計なお世話だと言われれば、それまでですが。

テレビがそうした苦境にある以上、若い人が「芸能レポーター」という職種を選択しないのは、合理的な判断と言える。そして、この傾向が芸能ニュースの価値をますます下げる。負のスパイラル。別言すれば、蟻地獄。さしあたり、今のところ、この状況が好転する見込みはないと私は思っている。

TBSの人気アナウンサー、安住紳一郎は、フリーに転身せずにサラリーマンであり続けていることがその人気の秘訣でもあるという人である。それはそれでいいのだが、彼にとっては、自身が定年退職するまであと約15年、TBSには退職金を満額払える企業であり続けてもらわねばならない。TBSの財務状況に一番目を光らせているのは、おそらく安住アナなのであろう。

というところで、冒頭の「長瀬の退所」である。

テレビに最早かつてほどの輝きや将来性はない。それは芸能界の一部の生命線が危機に瀕しているということでもある。だからか、最近では若いタレントや俳優が、ネズミが沈没船を見捨てるように、未練なく芸能界から足を洗う例が目立つ。安室奈美恵、渡辺麻友、沢尻エリカなど。ジャニーズ事務所からも、今井翼、渋谷すばる、錦戸亮、手越祐也などがこの3年の間に退所したという(個人的には今井翼以外知らないし、顔も浮かばないが)。

長瀬の退所も、このトレンドと無縁ではないかも知れない。なにしろ「事務所を移籍する」とか「ソロ歌手として独立してやっていく」ではなく、異業種への転職とも言える「裏方に回る」なのだからして。

テレビ業界がジリ貧である以上、タレント職から足を洗うのは、至って当たり前で、そんなに奇天烈な判断ではない。生き延びようと思えば、沈む船からは一刻も早く脱出するに限る。それはわからなくはない。

しかし、芸能界に疎い私には、この「裏方」が具体的に何を指すのかが、よくわからない。音楽家か演出家に転向しようとでもいうのだろうか? あるいは単独出資でインディペンデントな芸能プロダクションを立ち上げるか? よくわからないところである。

芸能界から綺麗に足を洗って一般の会社で再就職、というのは厳しいだろう。こう言っては角が立つかも知れないが、彼の最終学歴は高校中退、つまり中卒で、彼は「中卒の四十男」なのである。彼は13歳でジャニーズに入所したというから、無理のない話ではある。四十代での転職や再就職は、今時珍しくもなんともない。それでも、そこに「中卒」と「過去に一般の会社で働いた経験がない」が加わると、様相はにわかに厳しくなると思う。

ジャニーズ事務所は若い男をたくさん抱えた個人商店的なプロダクションで、小学生や中学生の男子も多数在籍している。その経営方針をどうこう言う気はないが、そこには「所属するタレントは、退所するなら若いうちにしないと、実社会で潰しがきかなくなる」という問題だってちゃんとある。その問題を、ファンである女性達は、黄色い歓声と共にネグレクトしちゃうんだから、私は「そんなんでいいのかなぁ」と思ったりもする。

長瀬だって、自身の境遇や進路について何も考えていないわけではなかろう。それでいてなお、彼はタレント職を辞そうというのである。事態がよくわからない私は「テレビ業界って、それくらいお先真っ暗な感じなの?」と思うが、実相が判明するには今少し時間がかかる。 


(三坂陽平)