夏というと、熱中症（昔は日射病と言っていましたね）で倒れる人が多くなる季節でもあります。皆様、お身体十分ご自愛ください。といっても、こと女性においては、倒れる原因になるのは、熱中症だけではなく「貧血」もあるかと思います。
女子栄養大学のデータによると、一日に摂取されるべき鉄分は十代男子の場合だと約九・五ミリグラム、同じ世代の女子は一〇・五ミリグラムだそうです。でもそうは言っても、ダイエットやシフト仕事のために規則正しい食事がままならなかったり、あるいは月経だとかで鉄分不足、貧血に陥る女性は（十代でもそうでなくても）多いのではないでしょうか。というところで「こんなのはどうでしょう？」と持ち出すのが、本稿の主題「岩鋳の鉄瓶」になります。
岩鋳製 南部鉄瓶
9型姥口亀甲
容量：1.1リットル
税込価格：44,000円
で、こういう流れだと、まずは「岩鋳ってなんなのさ？」について述べるのが定石になります。たぶん大多数の人は、岩鋳と唐突に言われてもピンとこないでしょうからね。でも今回は、先に「なんで鉄瓶なのか」について触れます。
先述のように、鉄分不足に陥ることは女性においては（もちろん人によりけりですが）そんなに珍しくないわけです。ではどう対策するか？ 不足しているのが鉄分であれば、日常的に微量の鉄分を摂る習慣をつければ、取り敢えずは済むはずです。
いくつか方策はありますが、食事療法なんかはなかなか根気が要るでしょう。特に夏なんかだと、暑気や多湿のせいで面倒くささが勝ってしまいがちです。別に毎日が「食べて寝る」だけということはほとんどの場合なくて、学業や仕事、家事や育児をこなしながらのことになりますからね。
となれば、日常使いのモノから鉄分を摂るという選択肢があっても良いのではないでしょうか？ それなら、食事療法ほどの手間はかからない気がする。というところで、岩手の岩鋳が作る南部鉄器の鉄瓶はどうでしょうかとなるわけです。
岩手県内で採れる砂鉄を使って「南部鉄器」を作る文化が当地で発展したのは江戸時代の初め頃。岩手県内に流れている一級河川に「砂鉄川」という名前が付くくらい、当地は鉄器文化が根強くある地域なのです。
件の岩鋳は、明治三十五年（一九〇二）の創業以来、岩手の南部鉄器文化を継続、保守しつつ、その時代その時代での南部鉄器のあり方を模索、提案し続けてきたブランドです。近年では、彼らの急須がフランスのレストランで愛用されたこともあるそうで、国内のみならず国外からも一定の評価を得ているようですから、彼らを「南部鉄器のフロンティア」と目してもそう間違いではないでしょう。
そんな岩鋳の代表商品である鉄瓶は、見た目には武骨で無愛想かもしれません。聞くところによると、鉄瓶というアイテムの由来は茶道の湯釜と言います。そういう点では、紛れもなく和のトラディッションをその形と機能に宿しているのではないでしょうか。つまりこの鉄瓶を使うことは、日本の歴史に触れるということに繋がっているわけです。
そういうブランドがあって、彼らが鉄瓶をつくっているのは分かった。でも、それで鉄分不足をどう補うのか？ 言うまでもなく鉄瓶は鉄器です。なので、使う際に二価鉄（腸が吸収する鉄分）が微量ながら溶出される。つまり鉄瓶で沸かすお湯には微量の鉄分が含まれる（と目される）わけで、それが鉄分を補う一助になるのでは、と提言する次第です。もちろんそれで本当に鉄分が過不足なく補われるかどうかは不透明ですけれど（だって鉄分がどれくらい足りていないかなんて、人それぞれと言えばそれまでですし、タイミングによっても異なる話ですからね）。
デメリットはないのか？ なくはないです。鉄瓶はもちろん鉄器の一種です。だからどうしたってサビます。これは材質が鉄である以上、避けられません。サビがあるかないかの目安は、沸かしたお湯が無色だったらＯＫだということみたいです。保管する場所も肝心だそうで、おすすめは風通しの良い所に保管することだとか。面倒だなぁと思われるかもしれませんが、「カラダも鉄器もメンテナンスが大事」ということではないでしょうか。ではまた。
