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■ 3月31日から4月29日にかけて、時計をフィーチャーいたします。







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【es】Mr.Children in FILM
このドキュメンタリーは何を訴えるべくして作られたか

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2012年の今や、日本のポップ・ミュージックの代表選手といっても過言ではない存在になったバンド、ミスター・チルドレン。1992年にミニ・アルバム『エヴリシング』でデビューした彼らは、2年後にはリリースするシングルやアルバムが片っ端からミリオン・セラーを記録し、その様子が「ミスチル現象」と呼ばれるにいたるほど、時代の寵児となっていた。

『【es】ミスター・チルドレン・イン・フィルム』
監督:小林武史
出演:ミスター・チルドレン
時間:112分
配給:東宝
さてさて、彼ら自身にとっても激動の時代であったろう、そんな頃に公開されたミスター・チルドレンのドキュメンタリー・ムービーがある。『【es】ミスター・チルドレン・イン・フィルム』だ。

1994~1995年のバンドのツアーの映像やゲリラ・ライヴの様子にメンバーへのインタヴューを織り交ぜながら、2時間足らずの映画は進行して行く。あるバンドが成功への一途にある中、何を思うのか。何を発信してゆこうとするのか。それらが極めて鮮明に刻まれている。

タイトルにもなった「エス」とは心理学用語で自我の一種であり、無意識のいわゆる衝動とも呼ばれやすい部分であるとされる。無意識に展開される性衝動(リビドーともいう)や自己破壊の欲求など、あらゆる欲求の根源部であり、この「エス」をコントロールするのが「自我」であるというもの。

この1995年という年は、終戦50周年であると同時に阪神大震災、地下鉄サリン事件、八王子スーパー強盗殺人事件などが発生した、近代日本史上まれとも言えるほど混沌とした年でもあった。同バンドもその中で時代の空気を吸い、何かを発そうとしているのが伝わる。

そしてそんな時代の「無意識」の部分に、もしかすると「ミスチル現象」はあたっていたのかもしれないとすら思ってしまう。当時を知る者にとり、また、同バンドの歴史を知ろうとする者にとり、一見の価値ありの映画と断言できる。ただ、残念なのは映像化されている媒体の規格がVHSしかないという点か。






 

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