『7月7日、晴れ』
七夕を題材とした、清廉たるラヴ・ストーリー
7月7日、七夕。仙台ではこの日にそうめんを食す風習があったり、北海道では「ロウソクもらい」というロウソクを子供たちがもらいに回るという風習があったり、各地にて様々な風習を持つ節日である。なお、七夕伝説の起源は中国のため、日本のみならず台湾・香港などでも七夕を祝う風習はある。台湾では同日は織姫の誕生日とされているのだとか。
七夕の物語を簡単に説明すると、その昔、織姫という機織りの器量よしの娘が天の川のそばに住んでいたという。その娘が同じく天の川そばで牛飼いをしていた彦星と両想いで結婚をするも、2人とも恋にうつつを抜かし仕事が手に付かぬ有り様であった。当然、周辺の者達からはクレームの嵐。それらの陳情を聞き入れた2人の世話人でもあった天の神様は、2人を仕事に集中させるため、天の川を挟んで別居状態にさせ、1年に1度だけ逢瀬の機会を与えることにした。それが七夕の日である、というものだ。
そんな七夕をモチーフにした映画が『7月7日、晴れ』(1996)だ。
『踊る大捜査線』シリーズで有名な本広克行監督の映画監督としてのデビュー作品でもあるこの映画は、いわゆる身分の異なる青年と少女の恋物語である。しかし、病気ネタでもなければ、泣かせる類のギミックの効いたものでも、ましてやドロドロとした愛憎ものでもない。七夕にふさわしい、清々しい作品となっている。恋物語と言い切ることさえ、ややはばかられる程、瑞々しい。
音楽を手がけるのは日本でも指折りのポップ・バンド、ドリームス・カム・トゥルー。彼らの音楽が随所に散りばめられ、正統派のラヴ・ストーリーとはまた一味違ったテイストを観る者に与える。ともすれば、実験的な映画かもしれない。
ある種の、ひねくれるのが成人の証と信じている人には、「こっ恥ずかしくて観てられない」と云われかねないほど、余分なものを除き、恋を描ききった作品。機会があれば、ぜひ七夕前後に観て頂きたい。
【es】Mr.Children in FILM
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