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『羅生門』
人間の多面性を鮮やかに描いたモノクロ映画の大家

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「真実を話すのは敵だけだ」

これはアメリカの作家、スティーブン・キング(『ショーシャンクの空に』『グリーンマイル』などの原作者として有名)の言葉であるが、いかに我々がウソを日常的につきながら生きているかということを的確に表している。

『羅生門』
監督:黒沢明
脚本:黒沢明、橋本忍
出演:三船敏郎 他
時間:88分
配給:大映

人間関係を円滑にするため、自身や大切なものを守るため、自己の利益のため、様々な動機から人はウソをつく。この場合の「ウソをつく」というのは、何も虚偽の進言をするだけにあらず、事実の意図的な隠蔽も含まれる。人は常に真実を語るものではなく、ウソと共に我々はあるのだ。

そんな人間の性(さが)を多面的に描いた名作映画がモノクロの時代に既に作られていた。故・黒澤明の1950年の監督作品『羅生門』だ。

あらすじは、1人の武士の死の謎を巡り、複数の関係者の証言から真実はいかなものであったかを突き止めていこうとする様を、平安時代の羅生門にて下人が回想するというもの。しかし1度観ただけでは混乱すること必定なほど、複数の視点から同じ事実が描かれてゆく。そしてそのどれもが違う内容なので「訳が分からない」となるだろう。そこには「ウソ」が溢れているからだ。

人の口から語られる「真実」の価値は何なのか? 信用は疑惑と共にあるしかないのか? 舞台は平安時代であるが、根源のテーマはいつの世にも通ずる普遍的な訴えを以って、我々に届く。

また、あらゆる面で妥協を許さなかった黒澤監督の作品ゆえ、演技・情景・構成なども、現在のそれらとは異なる、味わい深いものとなっている。いずれにせよ、人間の世の多面性と妙を極上の手法を以って伝えてくれる、色褪せない名作であることは間違いない。






 

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