もはや子供のみならず、大人までもがその世界観の虜になってしまう、日本を代表する海洋アドベンチャー・アニメーションといえば、『ワンピース』ということに異論を挟む余地はないだろう。
単純な友情を交えたアクション娯楽作品にとどまらず、戦争や宗教問題などの社会風刺をトッピングしながら展開されるその物語は、文化としての基本精神を忘れておらず、多くの民衆の興奮を誘発するものとして、今も有機的に進化し続けている。
劇場用アニメとしては2000年からほぼ毎年新作が公開されており、そのどれもが根強い人気を誇るため、優劣などを求めるランキングは作りづらい。その事を踏まえつつも、以下によってある程度の優先順位はつけられよう。
それは
1. 原作者の意図が色濃く反映されている。
2. 興行収入が上位である。
3. 子供のみならず、成人からのレビューも高い。
の三つによって、である。
この要素を満たす、ひとつマストな劇場作品を挙げるならば、それは2009年公開の、劇場版10作品目たる「ワンピース・フィルム『ストロング・ワールド』」ではないだろうか。
まず、原作者である尾田栄一郎氏が、初めて製作総指揮を務めており、随所に原作のテイストを活かした仕上がりになっている。それを証明するエピソードとしてこんな話がある。尾田氏が当初のシナリオを全否定し、一から話を練り上げたため、当初3月公開予定だったのが12月公開へと延長したというのだ(ワンピース巻五十六より)。このことから、オリジナルとしての妥協を許さない姿勢をこの映画は指し示し、アニメーションと漫画は限りなく近しいものとなったのだ。